日本代表も参加していたラグビーの「オータムネーションズシリーズ」は、世界ランキング6位のフランスが、格上のニュージーランドを40-25で破って優勝した。2023年のワールドカップ自国開催に弾みをつける勝利を掴んだフランス、一方で、新型コロナの影響もあり試合数が少ない日本代表の戦いぶりはどうだっただろうか。

10月に大分で開催した「リポビタンD チャレンジカップ2021」でのオーストラリア代表戦から振り返ってみよう。

終了直前に逆転圏内に迫ったところで現れる格の違い

ラグビーの試合で僅差の結果というと、一発(1トライとその後のゴールキックで7点)で逆転できる点差だ。

単発の試合ではなくリーグ戦で順位を決定する大会では、7点差(トライで5点、トライ後のゴールキックで2点)以内の敗北チームに、惜敗ボーナスポイントという大会勝ち点が1点与えられる。勝てば4点、引き分けで2点、負ければ0点という勝ち点システムだが、1発で同点に追いつける惜敗はただの負けではない、という考え方だ。

ちなみに、4トライ以上を記録したチームには、勝ち負けに関わらずトライボーナスポイントという大会勝ち点が1点与えられる。

この秋の代表戦の初戦となったオーストラリア戦、日本代表は昭和電工ドーム大分にオーストラリア代表を迎えた。昨年から他国に比べて極端に試合時間が不足しているうえに、格上であるオーストラリアを相手に、日本代表は試合終盤で4点差まで迫った。

この試合を観ていた中立ファンの誰もが日本代表の番狂わせを期待したが、終了間際にオーストラリア代表がトライを決め、23-32という結果で終わった。負けるわけにはいかないし、負けるはずがない、と強く信じていた格上のチームが最後に突き放した試合だった。

この後、欧州遠征初戦のダブリンのアビバスタジアムでのアイルランド代表戦では、5-60という惨敗に終わった日本代表。アウェーで格上を相手にした戦いだったとはいえ、日本代表がもう少しやってくれるのでは、というのが世界のラグビー界の期待だった。

2023ワールドカップに向けた日本代表の戦い

欧州での2戦目は、コインブラという小さな街の市民競技場でのポルトガル代表戦。チームの半分以上が、国内で他の仕事をしながらアマチュアとしてプレーするポルトガル代表は、日本代表にとって明らかに格下のチームだった。

当然、日本代表は若手に経験を積ませる試合としての布陣で挑んだという理由もあるが、ポルトガル代表は誰も予想していなかったような健闘を見せた。試合がロスタイムに入ったところまで6点差で食い下がってきたポルトガル代表だったが、最後に日本代表がインターセプトからトライを決め、38-25で試合終了となった。

この試合もまた、負けるわけにはいかないし、負けるはずがない、と強く信じていた格上のチームが最後に突き放した試合だった。

欧州遠征の最終戦は、エディンバラのマレーフィールドで行われたスコットランド代表戦。アイルランド代表と共に2019年ワールドカップでは倒した相手だが、客観的に見て日本代表にとってはやはり格上の相手だ。しかし、この秋の代表最終戦に挑んだ日本代表は、最後まで必死で戦った。

試合終盤に6点差で食い下がったが、終了直前にスコットランドがペナルティーゴールを決め、20-29での決着となった。この秋、日本代表の試合を生で観ているファンのなかには、デジャブを見ているような錯覚を覚えた人もいただろう。負けるわけにはいかないし、負けるはずがない、と強く信じていた格上のチームが最後に突き放した試合だった。

この秋の代表戦は日本代表にとって、アイルランド代表戦以外は「ある程度の接戦」となる試合だった。皮肉なことに、ポルトガル代表にもある程度の接戦をやられてしまったが、終盤の接戦になって現れる「格の違い」が両側から見える秋の代表戦だった。

2023年フランス大会のワールドカップまであと2年。ここから、日本代表がどこまで格を上げてくれるか、期待しよう。

▲6月のライオンズ戦を前に練習する日本代表 撮影:Taka Wu