ヨーロッパで熱戦が繰り広げられているラグビーの「オータムネーションズシリーズ」。ワールドカップなどの公式戦と違い、あくまでフレンドリーマッチが毎週欧州各地で行われるという位置付けだが、多くの代表チームがしのぎを削っている。

日本代表ブレイブ・ブロッサムズは、初戦のアイルランド代表戦では5−60と大敗を喫したが、続くポルトガル戦では38−25で勝利を掴んだ。そして、いよいよ11月20日22時に強豪スコットランドと対戦する。今年の6月に行われた連合チームのブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ戦では10-28で敗れたが、2019年ワールドカップでの歴史的勝利の再現なるか?

▲6月のライオンズ戦では10-28で敗れた日本代表 撮影:Taka Wu

ヒヤヒヤさせられる試合だったポルトガル戦

欧州遠征初戦のアイルランド代表戦で5−60と大敗を喫した日本代表は、プライドを取り戻す為にポルトガル、コインブラへと向かった。この試合が代表デビューとなった24歳の中野将伍(CTB)のトライを含め38−25で勝利を掴んだはいいが、日本にとっては何かと課題の残る試合となった。

試合後の会見で、現在もベテランとしてチームを支える前キャプテンのマイケル・リーチ(FL)は「防げるペナルティー(反則)を何度か犯してしまった」と、この日の試合を振り返った。

幾度となく反則を犯した日本は、ペナルティーゴールでポルトガルに6点を献上し、その後も反則により試合の流れを変えるチャンスをポルトガルに与えてしまった。

敵陣へ攻め込んだ状態でボールを与えてしまう反則は、相手を勢い付けてしまう。ピンチに陥ったポルトガルは、自陣ゴール付近での日本の反則で、なんとかピンチを脱する機会もあった。

欧州遠征とあり、ブレイブ・ブロッサムズ(勇敢な桜。海外でのラグビー日本代表の愛称)にとってはアウェーの戦い。スポーツ紙の9割がサッカーの話題で占められるこの国では、ラグビーはごく少数の人がプレーし、観戦するマイナースポーツ。だが、この日のコインブラ市民競技場には、ポルトガルで行われたラグビーの試合では史上最大の1万4000人の観衆が集まった。

2007年に、史上一度だけワールドカップに出場したラグビーポルトガル代表。1987年から毎回ワールドカップに出場し、地元開催となった2019年にはアジアの国として初めてベスト8進出を果たしたブレイブ・ブロッサムズをホームに迎える試合は、ポルトガルラグビーの歴史に残る試合となった。

この日、ポルトガルラグビー協会は国内での全てのラグビーの試合を禁止し、代表チームのオス・ロボス(狼、という意味のラグビーポルトガル代表の愛称)を応援しようと指揮を執った。国内にプロラグビークラブが存在せず、代表チームも半数以上がアマチュア選手であるポルトガル。国内の数少ないラグビーマニアたちが一つになって代表チームを応援すると決め、競技場には史上最大のサポーターが集まった。

かつて、ブラジルに大量の移民を送り出したポルトガルの民衆は、とにかくラテン系。熱狂的なサポーターが叫び、踊り、そして歌うなか、大敗が予想されたポルトガルの選手たちは、これまで見せたことのないような好プレーを連続し、後半の終盤まで日本に僅差で食い下がった。

日本と同様に、走り、パスし、スペースを活かしたボールを大きく動かす展開ラグビーを信条とするポルトガルのラグビーは、世界のラグビー界では日本の弟分として見ることもできる。両国とも観衆を沸かせるエキサイティングなプレースタイルを特徴とし、スポーツ好きな中立ファンが応援したくなるチームだ。

日本の勝利よりもポルトガルの健闘が目立った試合の次は、欧州遠征戦のスコットランド戦。

2019年ワールドカップで、日本に敗れて予選リーグ敗退の屈辱を覚えていないスコットランド人など誰もいない。公式にはイギリスの一地方であるスコットランドの人口は、約550万人。そんな一地方が国としての代表をワールドカップに送り込むスコットランドでは、ラグビーは最も人気のあるスポーツ。2019年の屈辱を覚えているファンたちが、熱い応援をしにエディンバラのマレー・フィールド競技場にやってくる。

そんなプレッシャーのなか、桜の戦士たちはどのような戦いぶりを見せてくれるだろうか。欧州遠征最終戦に期待しよう。