気持ちを自ら打ち明けてくれた愛来

「私、シンデレラになれなかった……」

大阪でのライブ終演後、愛来はそう話しかけてきた。

時計の針を1カ月ばかり巻き戻そう。

現在、絶賛販売中の2022年カレンダーの撮影があった日のこと。船を貸し切りにしての贅沢な撮影をしていたのだが、最初にソロ撮影を終えてしまった愛来は、そこからまるっと時間が空いてしまった。何をしているのだろう、と彼女の姿を探してみる。

愛来は、ただただ海を眺めていた。

「海が好きだから、こうしているだけで落ち着くんですよ」

笑みを浮かべながら、そう語りはじめた愛来は「東京の海って、波が穏やかですよね」と言ったあと、けっして穏やかではない心中を吐露しはじめた。

「私、今年こそはシンデレラになりたい。絶対になりたい!」

10月30日に横浜アリーナで開催された「シンデレラ決定戦」。スターダストプラネットに所属している若手アイドルたちが、1フレーズずつメドレーで歌い、誰がシンデレラにふさわしいのか、会場にいる観客とオンラインで鑑賞中の視聴者の投票によって決めよう、という企画。

これが2回目の開催となるが、1回目の大会で敗れた愛来はバックステージで悔し涙を流した。そう、今回はリベンジマッチにあたるのだ。

シンデレラになったらステージであの楽曲を歌い、ファンの皆さんにはこういう言葉で感謝を伝えたい……愛来の頭の中では、そこまで当日のイメージがしっかりとできあがっていた。

それは、ここまで歩んできたアイドル人生の総決算であり、そこから始まるアメフラっシの次なるステップへの華麗なる序章。シンデレラに輝いた数日後には新曲がリリースされ、すぐさま東名阪ツアーも始まる。まさに完全無欠のストーリー、である。

正直、この話を「毎週アメフラっシ!」に掲載しようかどうか、ギリギリまで悩んだ。シンデレラ決定戦というイベントを盛り上げることもできるし、愛来の決意を多くの人に読んでもらいたいという想いもあった。

しかし、このイベントは人気投票ではない。あくまでも当日のパフォーマンスが審査対象となるので、事前に過剰な煽り方をするのはちょっと違うかな、とも思ったし、このエピソードは一旦、胸の奥にしまいこむことにした。

見事に優勝すれば、すべてがステージ上で現実のものとなるし、もし優勝できなかったら、いつか「あの時はこう考えていたね」と笑い話にすればいい。