教育評論家の石田勝紀氏によると、幼少時から読書好きで、本に慣れ親しんでいたにもかかわらず、いざ大学受験のための国語を勉強する時期になって「苦手」となるケースがあるようです。その大きな理由は“読むジャンルが偏っているから”とのこと、国語の成績を伸ばす読書を教えてもらいました。
※本記事は、石田勝紀:著『子どもの「読解力」がすぐ伸びる魔法の声かけ -本は読まなくてOK!-』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。
「読書好き」なのに国語の成績が下がる理由
私が指導したなかに、非常に本好きな生徒がいました。仮にSさんとしましょう。Sさんは小学生のときから本好きで、休み時間も本を読んでいるような子どもでした。
Sさんの国語の成績は、当然、非常に素晴らしいものでした。特に読解問題については、常にトップ。“勉強”という勉強はしていませんでしたが、教科書の国語の文章自体に興味があるので、問題や問いの内容も一度で理解できます。正しい答えを導き出すことも、お手のものでした。
ですが、Sさんの国語の好成績は、ずっと続いたわけではありませんでした。
中学、高校へ進学し、いざ大学受験のための国語を勉強する時期になったとき、Sさんの国語の成績は“本をまったく読まない生徒たち”に、いとも簡単に抜かれていったのです。
多くの親御さんが「まさか?」「なぜ?」と首をひねりたくなる、このような事例は山ほどあります。
Sさんのように、幼少時から読書好きで、本に慣れ親しんでいたにもかかわらず、“国語が苦手になった”のはなぜでしょう。そこには、もちろんいくつかの原因が考えられますが、最大の理由について挙げておきましょう。
それは、“読むジャンルが偏っているから”という理由です。テストに関係する本のジャンルは、大きく分けて「小説・物語系」と「説明文・論説系」の2つに分類できます。
“読書好きで国語が苦手”という子は「小説・物語系」の本ばかりを読む傾向があります。反対に“読書好きで、かつ国語が得意”という子は「説明文・論説系」を好んでいることが多いのです。
少し想像していただきたいのですが、「小説・物語系」と「説明文・論説系」では、文章の構造が根本的に異なります。つまり“文字で書かれたもの”という共通点はあるにせよ、読んでいるときの「思考のプロセス」が両者はまったく違うのです。
国語の成績を伸ばす読書、伸びない読書
具体的に分析してみましょう。
「小説・物語系」の基本的な文章構造は、時系列に沿っていることが多いものです。登場人物たちになんらかの出来事が起こり、心情が変化する様子を描写しています。
一方で「説明文・論説系」は、基本的に「序文・本論・結論」という構造で成り立っています。また論理的展開が明確です。論理的な思考力が備わっていないと、国語のテスト問題を読み解くのはなかなか難しいことでしょう。
「読書好きの子」が、どちらのタイプの本を好むかで、国語の成績が変わってくることが少なくありません。“小説・物語系の本が好き”という段階でとどまっていたら、国語の成績は伸び悩む確率が高くなります。
一方で「小説・物語系」から「説明文・論説系」の本に興味が徐々に移っていく場合、国語の成績はアップする確率が高くなります。
実際、大人の例を出して考えてみましょう。
「幼いころから読書が大好きだったけれど、読むのは物語や小説だけだった。その後、説明文や論説系の本を読むことはなく、大人になってからは推理小説にハマっている」
そのような人は「私は小さいときから読書好きだったのに、国語の成績はよくなかった」、そうおっしゃるケースが非常に多いのです。
もちろん、そのような読書歴が悪いわけでは決してありません。小説や物語に浸ることも、人生の大きな醍醐味の1つです。ただ、そのような“読書の楽しみを堪能すること”と、読解力を養ったり、国語で得点できたりするようになることは、まったく別の次元の問題なのです。