天才タレント誕生!?

1999年に23歳で脱サラしてスーパースターを目指した俺が、芸人を名乗るのはこれより少しあとになるのだが、最近は「芸人の同期は誰なんですか?」と聞かれることが増えた。そのたび答えに困ってしまう。

なぜなら、ものすごくボンヤリと芸人になったので、養成所の卒業年や、デビュー年がわからないからだ。最初はタレント志望だったし、芸人になったあとも、どこまで芸歴をさかのぼってカウントしていいのだろう。

そもそも、芸人の「芸歴」という文化が俺はあまり好きではない。上下関係のプロレスをやりたいだけなら年齢でいいし、お笑いライブに出たのが早かっただけで先輩、後輩が決まる文化も不思議で仕方ない。

ただ1999年に初めて芸能プロダクションに所属したときの仲間は、間違いなく俺の同期だ。稽古やオーディションなどが終わると歌舞伎町に飲みに行った。「よーいドン!」で始まったライバルだったけど、みんなでこの世界で売れようぜと夢を語った。

▲今でも付き合いが続く仲間も

俺はいつもみんなを笑わせていた。仲が良かったやつと漫才やコントみたいなやりとりをすると、みんなが笑ってくれるのがうれしかった。

当時の俺は、自分のことを「演技も歌もうまくて面白いこともできる天才」だと思っていた。なんという自信だろう。

だけど、周囲の同期たちも俺と同じように自信家だった。酒を飲みながら「売れたらこんなことしたい」「あの街に住みたい」と大きな夢を語り合った。

彼らの多くはとっくにこの業界を辞めてしまったが、今でも連絡を取ってる同期がいる。彼は渋谷で居酒屋をいくつも経営する社長になっているのだが、俺より2~3歳下で同期といっても「大河さん」と弟のように慕ってくれていた。

歌舞伎町で危ない輩(やから)に絡まれたときも、俺がまったくビビらず微動だにしなかった姿をカッコ良かったと感じてくれたらしく、それ以来「この人スゲーな」と思ってくれているらしい。残念ながら俺は、その時のことをほとんど覚えていないのだけど……。

そいつとは定期的に会っていたが、あとから聞いたところ、一時期は俺と会うのを避けていたそうだ。

なぜかと聞けば、芸能の仕事がなく希望も持てずバイトばかりしていて自暴自棄になってるときに、俺と会うと「絶対これで売れてやるよ!」と目を輝かせる様子が眩しすぎたんだとか。いつも俺と比較してしまって、自分は何やってるんだろうとツラくなってしまったらしい。

そいつは、いつも俺のことを「先の見えない大変な世界で、まだまだ食らいついてるのがすごい」と誉めてくれる。だけど、俺からすればゼロから渋谷で居酒屋を経営する社長になったほうがすごいと思う。