松竹の風紀を乱す問題児と呼ばれて
ゴッドタンに出た当時は、まさに腐りきっていた。本人の弁を借りれば「芸人として詰んでいた」。
「約14年も組んでいたコンビを解散したときに、華々しく売れることはもう諦めたんです。テレビにこの顔が大きく映っても、みんな見たくないでしょう」
重ねた芸歴がネックになりR-1も出れない。どうステップアップするか、先の見えない日々が続いた。生き残るためにはどうしたらいいか、頭を悩ませ、事務所に相談をした。
「事務所からはネタを頑張れって言われました。でも、このままやっても無理やから悩んでんねん!って」
折りしも所属事務所を辞める芸人が相次いだこともあり、「もう二度と松竹を辞める人間を出したくない」との思いから、辞めそうな人をゲストに呼んで「辞めるな」と引き止めるYouTube企画『もう二度と松竹を辞める人間を出さないでおこうTV』の配信を始めた。
「事務所からはえらく怒られましたね。でも、愛があったからこそ、ぼくは問題を提起した。結果として、事務所内の“風紀”を乱してしまったけど、ヤンキーみたいなもんで、殴り合って仲良くなれると思っているからこそ続けたんです」
配信を続けるうち、次第に業界内に「面白いね」と言ってくれたテレビマン、お笑いファンが増えた。芸人仲間も配信に興味を持つようになってくれた。それがうれしかったという。根本にあるのは、芸人を笑わせたいという気持ちだ。
「プロとして失格だとは思うんですが、客よりも同業者を笑わせることが最高に楽しいんです」
プロは客を笑わせることで対価をもらう。だが、同業者を笑わせることの気持ちよさには勝てないとみなみかわは笑う。不思議なもので、芸人たちを面白がらせようと毒を吐き続けた結果、SNSのフォロワーも増えた。
「同業者から『最近調子いいですね』と声をかけられることも多くなったんですけどね、ぜんぜんテレビになんか出てないですよ。バイトばかりやってるんです」
今は大きなジャンプをする前に力をためている状態なのかもしれないみなみかわ。もしかすると、お笑い界は「人を傷つけない笑い」という大きな流れから、次のフェーズに移行する段階にあり、みなみかわの再ブレイクはそのタイミングにはまったと考えることもできる。
数少ない登場で爪痕を残し続けることができるのは、みなみかわが今の時代に数少ない好戦的な反逆者だからに違いない。
(構成:キンマサタカ)