『ここで死んでもいい』と開き直り
『ゴッドタン』(テレビ東京)の「腐れ芸人セラピー」で見せた、みなみかわの芸人力が話題を呼び、一躍、お笑い界の時の人となった。
「腐れ芸人セラピー」とは、ハライチの岩井、インパルスの板倉、平成ノブシコブシの徳井が、ひと癖もふた癖もあるくすぶり芸人たちに、ダメ出し&アドバイスを送るという人気企画。“腐り芸人三銃士”と呼ばれる3人がゲストを“論破”し、その負け顔を見せることで笑いも成立する。
しかし、ここでみなみかわが見せたふてぶてしい態度、冷めた目、人の心が通っていないような発言が、人気企画に波紋を投げかける。
「腐れ芸人が間違っている、という前提で番組が進むんですが、それが面白くなくてですね。呼ばれたときは、もちろんうれしかったですけど、絶対『何かしたろ』と思ってました。本当に面白い人たちがいじられて、負け顔をしているのが悔しかったから。もう芸人として詰んでるから、『ここで死んでもいい』と開き直りもありました」
数々のアドバイスに「なるほどね」「それを言っちゃあ、おしまいですよ」と攻撃的な腐りを見せ、共演者からは若手に悪影響を与える「腐ったみかん」とまで評されたが、テレビの前のお笑い好きは大いに湧いた。
「腐り芸人を揶揄して笑いをとっているあんたらは面白いのか、という思いも根底にあったかもしれませんね。すいません。でも、言われっぱなしにされるいわれはないでしょう? それに番組的にもこっちのほうが面白くなるという打算もありました」
昔から決まった型を崩すのが好きだったと、自身の芸歴を振り返る。
「悪い癖だって言われるんですが、ライブのMCしていても、ある程度決まった流れがあるのに、こっちに行ってみたらどうだろうって思いついたら、やっちゃうんですよ」
すると、周囲の芸人たちはもちろん驚き、そして慌てる。
「え、そっちに行くんですか? という顔をしている芸人を見るのが好きでしたね。ただ、これは僕が芸人として未熟だからでもあるんです。以前、『この流れだったらこうやってこう、と先輩たちが作り上げてきた流れがあるんだぞ!』って怒られたことがありました。その時に、『あ、先輩たちはゴールまでの道が見えてるんだ!』と驚きまして。僕はそんな先のことまで見えないし、チラッと見えているところを手探りしているだけなんです」
たとえば、大喜利コーナーで、途中からまったく違う流れを作るのと同じことなのかもしれない。最初は変な空気が流れたとしても、それをきっかけに大きな笑いに転化することもある。起承転結で言えば「転」の部分を担うのがきっと好きなのだ。
「待っているだけじゃ転がりださないから僕がやるんです。たとえば、ライブでMCをしたときも、面白い芸人を集めてそれでおしまい、じゃない。自分もリスクを負ってボケたり。もちろん、大きくスベることもありますね」