時間がない朝はパンツ1枚でトイレ待ち
刑務所では分刻みでスケジュールが決まっていて、それはトイレの時間も同様である。
朝食を済ませてから刑務作業に移るまでには30分間ほどの時間があり、この間に受刑者は用を足しておかねばならない。30分といえば余裕があるように思えるが、雑居房で6~8人の受刑者が共同生活しているため、ひとり当たりのトイレの時間は5分以下となる。
そのため、受刑者は手早くトイレを済ませられるように、事前に準備をしておく。
まず、トイレの前でズボンを脱ぎ、下半身パンツ1枚になってチリ紙を片手に持って待つ。そして、前の人が出てきたら素早く「トイレ入ります」と刑務官に声をかけてトイレに駆け込み、すぐに用を足して出てこなければならない。
雑居房の場合は、近年はトイレにガラス製の囲いが設置された施設があり、透けては見えるものの、臭いに悩まされる心配はない。とは言え、他人から丸見えの状態で用を足さなければならないのは大変なことである。
泥のような湯船に浸かる入浴タイム
トイレと同じく、入浴時間に関しても明確に時間が決められている。
それは季節に関係なくわずか15 分。その時間内に全身を洗い、ひげをそり(T字カミソリが全員に貸与される。しかし短時間での入浴のため、自費で電気カミソリを購入し、ひげそりは事前に済ませる受刑者も多い)、湯船に浸かって出なければならない。
どんなに汗をかいた日であろうとも、服役中は毎日入浴することができない。受刑者が風呂に入ることができるのは、春、秋、冬は週2回。夏だけは汗の量が増えることから週3回入ることが許される。
ほとんどの場合、風呂場の収容人数を超える受刑者が入浴するため、風呂場はすし詰め状態となる。浴槽も受刑者でいっぱいになってしまうため、浴槽に入ることができなかった者は、ほかの者が湯船から上がるのをじっと待ち続けなければならないのである。
また、入浴があとになるほど、浴槽には受刑者の垢が増え、まるで沼のように濁りはじめる。内観は町の銭湯と似たような雰囲気ではあるものの、ゆっくりと風呂に浸かって体を癒すことはできない。
刑務所の風呂で待ち受けているのは、殺伐とした雰囲気である。