ツイッターやインスタグラムなど、SNSを開けばいつでも情報を入手できる時代。しかしながら、刑務所という場所だけはそう簡単には情報を引き出すことはできない。法務省刑事施設視察委員会委員長等を歴任した「日本で一番、仕事で刑務所に入った男」が、知られざる刑務所内の食事情と生活について紹介します。
※本記事は、河合幹雄:著『もしも刑務所に入ったら』(ワニブックス刊)より、一部を抜粋編集したものです。
「臭い飯」の理由は古々々々々米だったから
刑務所内の食事はよく「臭い飯」と言われるが、今はそんなことはなく、実は塀の外の料理とさほど変わらない。歴史を紐解くと、戦後間もない受刑者の食事は予算の関係で古い米しか調達できず、それゆえ臭かったと言われている。
しかも、古々々々米ならいいほうで、古々々々々米を調達していたというから、臭くて当然であり、味も良くなかっただろう。
ちなみに、かつては麦6対白米4であり、刑務所を俗語で“ムショ”と呼ぶのは、その割合にちなんでいるという説もある(現在は白米7対麦3)。
今は、汁物は必ずついていて、基本は味噌汁だが、吸い物やぜんざい、ラーメンなどがつくこともある。そして、とんかつやカレー、おでんなどのメインメニューが一品、サラダや漬物などのサイドメニューが三品程度ついてくる。
受刑者ひとり当たり一日500円程度の予算だが、刑務所は栄養バランスのとれた食べ応えのある食事を提供している。しかし、味に関しては刑務所にもよるが、総じてましだが美味しいものではない。
多くの受刑者にとって楽しみとされているのが、主食がパンの日である。パンの日には刑務所内俗語で言うところの「アマシャリ」が出るからである。「アマシャリ」とは、汁粉、ぜんざい、甘煮豆などの甘味のあるサイドメニューを指している。
ちなみに、刑務所内で暴動が起こる理由として「食」に関することがいくつかある。
有名な話では、かつて府中刑務所で「天つゆ事件」というのがあった。天つゆに添えられた大根おろしを初めから入れるか、それとも好みで入れるかという些細なことで大騒動になったのだ。
ただ、暴動に至るまでさまざまな理由があって、最後の引き金となったのが天つゆだったのだが、受刑者たちの収容生活は単調なだけに、食に対して過敏に反応することは間違いないし、刑務官たちも細心の注意を払っている。