『ここにいるよ ジョイマン・高木のツイート日記』が好評のお笑い芸人ジョイマンの高木晋哉。10年分のツイートをまとめたこの本を読めば、ラップでしか印象のない人も、彼の文才に舌を巻くだろう。

そんな彼に影響を受けた芸人や、本の帯を書いてくれた細野晴臣、花澤香菜との関係性、そして土壇場を感じたというサイン会0人事件の真相について聞いた。

▲俺のクランチ 第16回(後編)-高木晋哉-

ジョイマンファンを公言する細野晴臣、花澤香菜との関係

文体は大好きな村上春樹から影響を受けたと語る高木晋哉。では、お笑いではどういった芸人に影響を受けたのだろうか。

「芸人になりたいと思ったきっかけは、ナインティナインさんですね。でも、芸人になってから一番影響を受けたのは、一発屋オールスターズの皆さんです」

ムーディ勝山、レイザーラモンHGなどからなる、一時代を築いた芸人たちによるユニットが一発屋オールスターズ。彼らはジョイマンが駆け上がり、そして下っていくのをしっかりと見ていた。

「僕が、まだ落ち目になりつつあったことを受け止めきれないでいる頃、一発屋オールスターズの皆さんに“お! 高木! 背中にいい哀愁が出てきたな、こっち来るか?”って誘っていただいて、それきっかけで“どうも!一発屋です!”って胸張って言えるようになったんです。一発屋って悪い言葉じゃないじゃんって思えたのは、一発屋オールスターズの皆さんのおかげですね」

なかでも、『右から来たものを左へ受け流すの歌』で知られるムーディー勝山には、非常にお世話になったという。

「お互い泥水をすするような生活をしているときに、勝山さんがいきなり“もし、もう一回売れるようなことがあったら、俺はテレビに出ない”って言ったんですよ。スゲーなって思って。当時はもう意味がわかんなすぎて、これは悟りの境地に行ってるなと思ったんですけど。でも、僕もこの言葉の意味が、今となっては少しわかるんです。テレビを愛し過ぎたがゆえに、テレビのことを嫌いになってる。好きすぎるがゆえにフラれる前にフル、みたいな……(笑)」

ムーディー勝山は、この本の帯に名文を残している。

あなたが色々な思いをして過ごしてきたこの月日。その間も毎日「ありがとうオリゴ糖」と韻を踏み続けた人生がある。そんな日々を僕は、右から左へ受け流せない

 

また、この本には勝山以外にも、細野晴臣や花澤香菜という大物が帯にコメントを寄せている。

「細野さんが僕らのネタをやってくれてるらしいって噂をスタッフから聞いて、え? 細野晴臣って、あの細野晴臣? はっぴいえんどとかYMOの?って。最初は事態を飲み込めなくて。そしたら今度は細野さんがインスタで“ガタンゴトン ガタンゴトン ガタンゴトン ヴィトン”って僕らのネタをやってくれてる。しかも、よくわからない部屋みたいな所で、1人で立ってやってるんですよ。面識もないから、ただ“好き”だけでもうれしいのに、実際にネタをやってくれるのがめちゃくちゃうれしかったし、未だに他の人がやったジョイマンのネタのなかで、細野さんの“ガタンゴトン ヴィトン”が一番面白いです」

細野はラジオなどメディアで、ことあるごとに「ジョイマンの“ガタンゴトン ヴィトン”がいい」と言ってくれたという。

「とにかく“ガタンゴトン ヴィトン”が好きらしくて、“ヴィトンで音が転調するのがいいよね”と言ってくださって、こちらは全然そんな意識ないんですけど(笑)、音楽家の視点で褒めてくださったのはうれしかったですね」

その後も交流は続き、なんと細野晴臣音楽活動50周年記念イベントの出演をオファーされるほどに。

「ライブの終盤で我々を呼び込んでくださったんですけど、一緒になってジョイマンダンスを3分以上踊ってくれたんです(笑)。そしたら、それで精根尽き果てたみたいで、スタッフに“疲れた、アンコールはやりたくない”って拒否して。これが俗にいう『細野晴臣、ジョイマンダンスでアンコール拒否事件』です(笑)。せっかくの50周年で、しかもライブも2Daysの2日目で疲れているところなのに、御本人にもファンの方にも本当に申し訳ないことをしました。でも、今回もこうやって帯に素敵な文章を書いてくださって、すごく尊敬してます」

人気声優の花澤香菜も、帯に素敵な言葉を寄せてくれている。

「花澤さんは、もともとお笑いにすごく造詣が深い方で、ライブで僕たちのネタを一緒にやりたいって、天津の向さんを介してオファーしてくださったんです。正直、最初は花澤さんのことを存じ上げなかったんですが、向さんが“すごいことやぞ、これは!”って。そしたら、確かにすごい人気の方で、しかもとても真面目で真摯。最初の顔合わせの練習のとき、もうすでにステップとダンスが完璧で。聞くと“前から練習してました”って。すごくうれしかったですね。帯も素晴らしいですよ、ジョイウーマン第一号です」