「食べてないのに痩せない、なんで?」。それは、食べないからこそ脂肪が蓄積されてしまうから。特に朝ごはんは、食べる時間や内容を気にしてあげるだけで、代謝が全く変わるのです。管理栄養士の大島菊枝氏が「時間栄養学」の観点から、朝ごはんの重要性を解説します。

※本記事は、大島菊枝:著『一生太らない食べ方習慣 朝ごはんはすごい』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。 

ヘルシーなのにどうして痩せないの?

朝は食べないか、グリーンスムージーのみ。1日の総摂取カロリーをせっせと計算して、ダイエットしている。そういう人ほど、こう言うことが多いのです。

「食べてないのに痩せない!」

それもそのはずです。1日に摂ったカロリーの「代謝」をするためのスイッチを入れていないのですから。

▲ヘルシーなのにどうして痩せないの? イメージ:Mills / PIXTA

代謝とは簡単に言うと、食事などで摂取したカロリーを、体の維持や活動のためにエネルギーに変えること。代謝量が増えれば自然に健康的にやせることができますが、代謝量が減れば、脂肪をため込みやすい体になってしまいます。

私たちの体は夜になると、「栄養ため込みモード」になります。これは人間の本能。寝ているときにはエネルギーをできるだけ使わず、栄養を取り込んで蓄積するという仕組みになっているから。人間の長い歴史のなかで、食べ物の心配をせず、飢餓を恐れない時期は、まだとても短いのです。夜は省エネをして静かに休み、昼間は活動できるようにせっせとエネルギーを代謝します。

ダイエット中だからといって朝ごはんを食べなければ、この「代謝モード」にならないまま、昼を迎え、夜になってしまいます。しかも、食べる量を減らしているのですから、なおさら「飢餓直前! もっと脂肪を蓄えておかないと」と体が判断してもおかしくありません。「食べてないのに痩せない」とは、こういう状態なのです。

朝ごはんを食べない人と食べる人を比べると、肥満は5倍も多いというデータもあります。代謝が落ちていると思う人は、まず朝ごはんを。効率よく脂肪を燃やすのに、すぐできる簡単な第一歩です。

朝ごはんを食べる=痩せる。ここではその仕組みを説明していきましょう。

朝ごはんを食べることは痩せるためのスイッチ

人間の体温は、寝ているあいだは低くなっています。体は寝ているときにエネルギーを蓄積し、「ため込みモード」で、翌日の活動に備えているからです。

朝起きてボーっとしているときは、まだ低体温。食べることで徐々に体温が上がっていき、さらに代謝が活性化します。たかが体温と思うかもしれませんが、1度上昇するだけで基礎代謝(安静にしていたとしても代謝するエネルギー)が13~15%アップするというのですから、これは大きい!

女性なら基礎代謝が1200kcalの場合、約160~180kcalが何もしなくても多く消費されることになります。

▲寝ているとき体温は下がる イメージ:Fast&Slow / PIXTA

朝ごはんを食べて体内時計のリズムを整えると、時計遺伝子とエネルギー代謝の両方に作用するたんぱく質の一種、「PGC-1α」が活性化し始めます。これは、ほぼ全ての細胞の核にあるミトコンドリアができるのを促す役目があり、筋肉が作られる手伝いをしてくれます。さらには、脂肪組織にも作用して、エネルギー代謝をアップしてくれるというわけです。

朝ごはんを抜いて、そのまま仕事に出かけてしまったら、低体温で代謝は動き出さないまま。せっかく動きまわっても、カロリー消費は食べた場合より少なくなってしまうのです。実際、活動や学習効率も低くなっているというデータもありますから、元気に働いたり勉強するためにも、朝ごはんは重要なのです。

また、朝ごはんを食べなかった場合、ランチのあと、夕食のあとの体温も上がりにくくなることがわかっています。つまり一日中、体温低め、エネルギー効率悪め、になってしまうというわけ。これが毎日続いたら、それが“普通”になってしまうから恐ろしいのです。