最近初対面の人に
「意外と落ち着いてるんですね」と言われる。

“意外と落ち着いてる”

言葉だけ見ると、大人な雰囲気で、クールでカッコ良い褒め言葉という見方もあるが、オレに向けられている言葉はそういう意味ではない。

テレビやYouTubeの印象だと
“明るくて弾けてる人″だったけど、
実際会うと結構暗いんですね。

という意味である。

まあ確かに映像の時はやる気スイッチも入れてるし、仕事なんだからそりゃテンションも高めですよ。こればっかりはがっかりされても仕方がない。

でも、20代の頃はベースのテンションも高かった。

周りからも明るくて陽気なやつっていう認識を持たれていたし、自分でも無理して明るく振舞っていた気がする。

じゃあなんで明るくしていたかと今考えると、明るい方が面白いし人付き合いが良好になると思っていたからだ。

オレは今年で34歳になる。
30代半ばに入って、よくやく自分の性格や人格をある程度理解してきた感じがする。

たどり着いた答えとしては、根の根のオレはちょっと暗めのちょっと人見知り。

このちょっとっていう表現はまだプライドが残ってる証拠だ。

暗い自分ってのはなかなか受け入れ難い。
だってずっと明るいパリピ男だって外ヅラで生きて来たから。

でも自覚したからって受け入れられる訳ではない。やっぱりネアカだって思われたい気持ちはどこかにありますよ。

その混沌が如実に出る場所がある。

それは美容室だ。

美容師さんとの距離感は皆んなそれぞれのスタイルを取っていると思う。

ガッツリ美容師さんとお話しする人もいれば、一言も話さずにスマホを触ったりと様々であろう。

オレはもちろん「鬼の沈黙」でお店が渡してくれるiPadで意味のわからない株や経済の情報誌みたいなやつをあたかも興味ある風に見ている。

なんなら小さく「なるほどね…」と呟くくらいの演技派だ。

そんなオレも浮かないくらい、もう美容室では喋ろうが喋らなかろうがどっちでもいい雰囲気が出ていると思う。

ただ、まだそのルールが確定してない場所がある。

それは眉毛サロンだ。

眉毛サロンはというのはその名の通り眉毛を綺麗に整えてくれるところだ。
手先が不器用で自分できなくて、最近行き始めた。

この眉毛サロンに来て驚いた事がある。

それはほとんどのお客さんがサロンの人とめちゃくちゃ喋るのだ。
仕事の話に恋の話、もう喋りまくっている。
その様は久しぶりに再会した地元の親友を彷彿とさせる。

一体なんなんだ? 
なんでこんなにぺちゃくちゃ喋るんだ?
怯えながらもオレは考察した。

ここの店は、席と席の間にちょっとした仕切りがあって「半個室」みたいになっていて、よりプライベートな空間が演出されている。

その分、心の扉が開きやすいから店員さんとの会話が弾むのだろう。

ただ甘いな。
そんな空間の演出だけではオレの心の扉は開かないぜ。

オレの雰囲気を察してか、サロンの人も全く話しかけてこない。

ただ静かに眉毛が凛々しくなっていく。