携帯電話の料金プランから、フィットネスクラブやサブスクまで。今や「料金プラン」の選択をせまられる場面が急増しています。そんななか、(自分にとって)損するプランを選んでしまっている人もなかにはいるようです……。行動経済学の専門家で、最優秀論文賞も受賞している太宰北斗氏にその理由を聞きました。

※本記事は、太宰北斗:著『行動経済学ってそういうことだったのか! -世界一やさしい「使える経済学」5つの授業-』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

うっかり損している人はけっこういる?

「健康管理」と言えば、フィットネスクラブです。皆さんも利用しているかもしれませんね。

仮に、「月7000円で使いたい放題」の料金プランと、「10回利用で1万円」の料金プラン、どちらを選ぶか聞かれたら、どちらにしますか?

使いたい放題のプランを選んだ人は、もしかしたら“うっかり”損をしているかもしれません。

実は、7000円の料金プランを選んだ人は、入会しているあいだに6万円も損していたという話があるのです(研究データのドル表記を1ドル100円換算で表記しています)。

▲うっかり損している人はけっこういる? イメージ:JackF / PIXTA

ステファノ・デラヴィーニャ氏とウルリケ・マルメンディア氏が、アメリカのフィットネスクラブの入会者7752人を3年間にわたって調査した結果、なんと月の一括払いを選択した人は月あたり平均4.3回の利用しかしていませんでした。

つまり、1回利用するたびに1700円ほどを支払うことになるわけです。

最初から10回利用の回数券を買っておけば、1回あたり1000円で済んだわけですが、どうしてこうなってしまうのでしょう?

目の前のご褒美を重視しすぎると判断が危うくなる 

次の質問を考えてみてください

【質問1】

次の2つの選択肢のうち、あなたの好きなほうを選んでください。

  • A:今日、100万円をもらう
  • B:1年後、110万円をもらう

【質問2】

次の2つの選択肢のうち、あなたの好きなほうを選んでください。

  • C:10年後、100万円をもらう
  • D:11年後、110万円をもらう

もし、あなたがフィットネスクラブでお金を払いすぎる傾向にある人なら、質問1ではAを、質問2ではDを選んでいるはずです。つまり、非合理的な判断をして、損しやすい傾向の人である可能性があります。

AとDを選んでいた場合、問題になるのは、皆さんが今日ご褒美をもらえるとなれば、いてもたってもいられないのに(Aを選ぶ)、10年後の話になったら自分は我慢ができると思い込んでいることです(Dを選ぶ)。

いざ10年後になったとき、しっかりそこから1年間待てますか?

あまり自信はないですよね。10年後に突きつけられる問題は、結局は質問1と同じなわけですから。

このように、目の前のご褒美やコストを重視しすぎてしまい、判断が歪むことを行動経済学では「現在バイアス」と言います。

▲目の前のご褒美を重視しすぎると判断が危うくなる イメージ:Khosro / PIXTA

入会のときには回数券と比較して、月7000円の月額料金がお得だと思ったから、月契約にしたはずですよね。その時点では「月7回以上は利用する」と思っているわけです。

このとき、1カ月のあいだに7回運動しないといけないコストは、将来のことなので軽く見られています。でも、いざ次の日になって運動するかというと、そうはしません。100万円を待つのがつらかったように、“今日”ジムに行くのが面倒になってくるからです。

つまり、いつまでたってもイタチごっこを繰り返し、どんどん問題は先延ばしになってしまう、というのが現在バイアスの問題です。