メンバーは皆、苦悩し、成長を遂げていた

人生を賭けた、46人の少女たち。

彼女たちの想いがよくわかるからこそ、なんともいえない空気に胸がキューッと締めつけられそうになる。

ももクロがライブをやっている最中にシンデレラが発表された。

客席のモニターは発表する直前で中継がプツンと切れる。このあとの登場シーンで観客ははじめて知る、という演出だ。

しかし、歌の準備もあるので、バックステージではそのままシンデレラを発表するしかない。すでに泣いている子もいれば、みんなで手をつなぎ、目を閉じてその瞬間を待っているグループもある。そんな中、アメフラっシは他のグループに埋もれるように後列の目立たない場所に陣取っていた。真正面にいたけれど、他のアイドルに紛れて、どんな挙動をしていたのかが見えないほど、目立たないポジションに4人はいた。

そして、シンデレラとして名前を呼ばれたのは『CROWN POP』の三田美吹だった。

エントリーナンバーは46。つまり、メドレーで最後の最後のパートを担当したのだが、これは有利とかいう以前の問題で、ももクロの代表曲である『走れ!』の百田夏菜子の印象的なパートを1万人の前で歌いこなさなくてはいけない。しかもメドレーをピシッと締めなくてはいけないのだから、このプレッシャーはハンパではないし、それが客席にも伝わり、その上で百田夏菜子が「私、あのパートをあんなにうまく歌えたことがない。曲も喜んでると思う」と絶賛するぐらい見事に歌いきってみせた三田美吹に票が流れたのは、ある意味、当然のことだった。まったくのダークホースがシンデレラの座に駆け上っていく図式は、こういったイベントの醍醐味でもある。

たくさんのグループが号泣し、泣き崩れ、抱き合いながら慰めあう中、アメフラっシはごくごく冷静にそこに立っていた。

「うーん……すごく悔しかったし、本当は泣きたかったですよ。でも、ちゃんとシンデレラに『おめでとう!』って言わなくちゃいけない、という気持ちが強かったから、ここは笑顔でいなくちゃダメだって。だから、平気な振りをしてました、最初は」

こちらが拍子抜けするぐらいのリアクションだったが、三田美吹が歌の準備をするためにその場を離れ、カメラがいなくなった瞬間、愛来は突然、泣きだした。号泣ともまた違う。静かに泣いているんだけれども、涙の量が尋常ではない。

このイベントはあくまでもシンデレラを決めることが目的なので、2位以下の順位は発表されないし、票差すら明かされない。ただ、愛来が好位置につけていたことは想像に難くないところ。とにかくシンデレラになれなかったことで、このあとのエンディングでは「その他大勢」のひとりとしてステージに立つしかない。逃したチャンスは本当に大きかった。

そっと彼女たちに近づいてみると市川優月の声が聞こえてきた。

「大丈夫だよ。私たちは愛来のおかげで高い位置にいさせてもらえるんだからさ。ありがとね」

こんなにも大局を見据えた上で、自分を下げつつ、愛来を静かに励ます姿にはちょっと驚いた。愛来も「こんなことを言ってくれるんだって、嬉しくてびっくりしました」。

ここまで愛来の苦しみや葛藤をメインに昨年末からの流れを追ってきたが、同時に他のメンバーも思い悩み、深く考え、内面的には大きな成長を遂げていた。愛来がシンデレラになっていたら、そこに気づくこともなかったかもしれない。そういう意味では価値ある敗退でもあったのだ。

あんなに泣いていたのに、愛来はわずか数分のあいだに涙をすべて拭って、なにごともなかったような顔をして、ステージに上がっていた。

けっして涙が枯れたわけではない。

この直後には振り付けのAnna先生とバックステージで顔を合わせた瞬間に、また大粒の涙を流しているのだから。

そういった背景がまったく伝わることなく、このイベントのことが忘れ去られていくのはもったいない――そう思い、その場で愛来のインタビューを申し込み、こうして早めに掲載した次第だ。今後も毎週更新の利点を活かして、フレキシブルに4人の現在進行形の姿をお伝えしていきたい。

だが、ここで愛来の物語を終わらせるわけにはいかない。

なぜ、バックステージでこんなにも涙を流し、インタビュー中にも大泣きしたのか?

そこには場所も同じく横浜アリーナから繋がっているドラマがあり、年頭の大チャンスを逃してしまった今、アメフラっシはなにをしていけばいいのか、というリアルな現実が横たわっている。

それについて、愛来は涙を拭きながら、ゆっくりと話しはじめた。

【連載4回目の追記】
涙とはけっしてマイナスなものではない。時には青春の証であり、またある時には少女たちの成長の証でもである。「涙の数だけ強くなれる」はまさに愛来の、そしてアメフラっシのためにある言葉なのかもしれない。次回はその涙の先に見据える未来をお届けしたい。

<アメフラっシ今後のスケジュール>
※下記のイベントは変更となる可能性があります。
​最新情報は「アメフラっシ」公式サイトでかならずご確認ください。

https://www.amefurashi.jp/

2月27日(木)
下北FM「DJ Tomoaki's Radio Show!」‬
出演:市川優月・小島はな
会場:SFMホール(スタジオベイド下北沢店)

3月14日(土)
IDORISE FESTIVAL 2020-DAY-
会場:TSUTAYA O-EAST、TSUTAYA O-WEST、TSUTAYA O-nest、TSUTAYA O-Crest、duo MUSIC EXCHANGE、club asia 、WOMB (※7会場連動)

3月15日(日)
H.I.P.presents「GIG TAKAHASHI tour 2020」※オープニングアクト
会場:新宿BLAZE

3月18日(水)〜22日(日)
五反田タイガー 7th Stage「WORKER ANTS と 働かないアリ」
出演:愛来・鈴木萌花
会場:CBGKシブゲキ!!

 

『毎週アメフラっシ!』は次回3/3(火)更新予定です、お楽しみに。