今のアメフラっシに足りないものとは何か?
「あれは自分に言い聞かせるために言ったんです。もう前だけを見て、一歩も下がらないぞって」
前回掲載した昨年12月15日の神田明神ホールでのコンサート。そのエンディングで愛来は「もう一歩進んで一歩下がる、は嫌です!」と強い口調で言い放った。
その真意を知りたくて、そして、もっと聞きたいことがたくさんあったので、1月下旬のある日、愛来に90分という長時間にわたりインタビューを敢行したのだが、まずは神田明神ホールでの決意表明に関して、静かに愛来は語りはじめた。
「とにかく、あの日はたくさんのお客さんが来てくださって。まず、私たちがやらなくちゃいけないのは、これ以上、ファンの方に心配をかけないこと。そのためにはしっかりした姿を見せなくちゃいけないじゃないですか? だから自分にそれを言い聞かせたんです。もう一歩下がるのは嫌だよねって」
あの言葉はたしかに胸に刺さった。
だが、裏を返せば、そんなひとことが刺さりまくってしまうぐらい「これまでのアメフラっシには心を揺るがすような熱さが足りなかったのではないか」とも言える。
昨年の秋ぐらいから僕は積極的にアメフラっシのイベントに足を運ぶようになった。それ以前も、ももクロのコンサートの外周ステージで彼女たちのパフォーマンスを見ることもあったし、スターダストプラネット(スターダストプロモーションのアイドル部門)の全体イベントや『TIF』(TOKYO IDOL FESTIVAL)でも何度となく見かけてはきた。
なんだかんだで彼女たちはそうやって、自分たちのファン以外の人たちが、それこそ1万人単位で集まるような場でパフォーマンスを披露する機会が何度となくあった。これは現在のアイドル市場を考えたら、かなり恵まれた環境である。
でも、正直な話、それを活かせてきたかと聞かれたら、非常に微妙なところ。
楽曲もいい。
パフォーマンスだって悪くない。
ただ、それだけでは「じゃあ、今度はソロライブに行こう!」と観客の心を動かすにはちょっと足りない。まったく興味のない人を立ち止まらせ、耳を傾けさせるには十分すぎる力を彼女たちは持っているが、その先の「もう一歩」になかなか届かないでいた。
ひょっとしたら、それが見ている者の心を揺さぶる熱さなのかもしれない。
いや、これが5年ぐらい前だったら、間違いなく、それが「正解」だったと思う。でも、とてつもなく多様化が進んでいる2020年のアイドル業界では、けっしてそれだけが「正解」ではないだろうし、アメフラっシの進むべき道にそんなものは必要ない可能性だってある。だから、これまではあえて言及してこなかったが、ここ数カ月間のステージを総括する意味で、あえて愛来に正直な感想をぶつけてみた。
「アメフラっシのステージは満足度が高いし、来てよかったな、といつも思う。ただ、心をかき乱されるようなことはあまりない。知り合いの手を引っ張って『ぜひ見てやってくれ!』と言いたくなるような衝動にまでは駆られなかった。僕はそう感じてしまったんですけど、どう思いますか?」