今季のCS(クライマックスシリーズ)争いにこそ絡んでいる読売巨人軍だが、首位争いに絡めなかった理由のひとつが捕手の運用だろう。果たして大城卓三は打撃だけの選手なのか? 小林誠司はもう期待できないのか? そして、西武ライオンズの森友哉は獲得すべきなのか? 過去・現在・未来を見渡しながら熟慮していきたい。

前任が偉大だとハードルが高くなる捕手というポジション

巨人の捕手といえば、2019年に引退した阿部慎之助を誰もが思い浮かべるだろう。阿部の存在は非常に大きかった。ルーキーイヤーの2001年、ベテランの村田真一からレギュラーの座をいきなり勝ち取ると、その後も正捕手としてキャリアを順調に築き、チームを2015年までに7度のリーグ優勝、3度の日本一に導いた。

キャリア終盤は、捕手としては限界にきていたが、一塁にコンバートされると打力をいかんなく発揮。キャリア最終年はリーグ優勝に大きく貢献して、有終の美を飾った。阿部に関しては、巨人の生捕手というだけではなく、プロ野球の歴代で見てもトップクラスの打力があり、複数回の優勝や日本一に導いた超一流の捕手である。

その後の正捕手争いを見ると皮肉なことに、この阿部が前任のため、巨人の捕手に求められるハードルが非常に高くなっている。

これは他球団も同様である。ヤクルトは、2015年にリーグ優勝を飾り、2021年・2022年は連覇を果たしたが、中村悠平が正捕手として確立したことが大きい。しかし、古田敦也が引退して以降は、2014年まで相川亮二が正捕手を務めたが、Aクラスこそあったもののリーグ優勝までにはいたらなかった。

中日も、谷繁元信以降の正捕手に苦しんでおり、2021年にようやく木下拓哉が出てきた。それほど、正捕手の存在は大きなものであり、5年から10年は前任の穴を埋められないこともあるポジションだ。

バランスの良さが光った2019年のローテーション

阿部が捕手として限界を迎えつつあった頃、2016年〜2018年は主に小林誠司が正捕手のマスクを被っていた。しかし、“前任捕手・阿部慎之助”というかハードルが高すぎたため、非常に苦労しているように思えた。

特に、抽象度が高くない守備面とは別に、可視化される打撃面の成績は顕著である。打撃面で見てもタイトルホルダーだった阿部から、守備型捕手の小林に世代交代した際に、風当たりが非常に強かったのは否めない。

しかし、小林のスローイング・フレーミング・ブロッキングなどの総合的な守備力は、巨人捕手陣のなかでは頭ひとつ抜けている。一軍に居続ければ、チームの防御率向上に貢献できる選手だ。一方で課題としては、打力はもちろんのこと、試合に出続けることで疲労が溜まると、そのパフォーマンスが急激に下がることだ。

この課題点がチームの成績に結びついていたこともあり、2017年のドラフトでは打撃型捕手の大城卓三、2018年オフには炭谷銀次朗を獲得したのではないだろうか。

その結果、2019年は小林が91試合、大城が62試合、炭谷が58試合マスクを被った。これは非常に効果的な捕手運用で、3選手がそれぞれ高いパフォーマンスを維持しながら、相性がいい投手をリードして、リーグ優勝を果たした。

このシーズンの小林は、攻守におけるパフォーマンスを最後まで持続。事実、打撃は規定打席未到達ながらもキャリアハイを記録し、守備もほとんど精彩を欠くことはなかった。

大城は、2019年のシーズンで捕手以外に一塁手も任され、打撃面でも貢献した。打力ばかり注目されがちだが、スローイング・フレーミングと言った守備面でも水準以上のパフォーマンスを残してきたのだ。指標だけ見ると、2021年シーズンの盗塁阻止率はリーグ1位を記録しており、「DELTA FIELDING AWARDS 2021」にも選ばれた。

しかし、課題点もある。それは、プレッシャーがかかる場面で随所に見られるディフェンス面のリカバリー力だ。この部分は入団当初から小林と比較すると、まだまだ及ばない部分がある。さらに、小林と同様に試合に出続けるとパフォーマンスが落ちるのも課題で、打撃面でも好不調の波が激しいことがある。

ただ、調子がいいときの大城は非常に魅力的な選手だ。捕手でありながら、2桁本塁打を見込める点は、他球団と比較してもプラスになることが多い。そのため、なおさら小林との併用をうまくしていくことが重要である。