原監督に大城を重宝させる強打者・阿部慎之助の残像

大城と小林を運用していくポイントで、じっくり見ていきたいのは投手との相性だ。

先発陣との相性を見ると、今シーズンの大城は、山崎伊織や戸郷翔征、赤星優志と相性がいい。逆に小林は、菅野智之や戸郷、マット・シューメイカーとの相性がいい。この相性を鑑みて、ほとんど投手成績が変わらないのならば、打力がある大城を優先し、成績に差があれば、相性がいいほうを中心に起用するのがいいだろう。

CCメルセデスの場合は、デビュー以来、大城との相性がよかったため、安易に小林と組んだ今年のデータだけで決めるのではなく、来シーズン以降も様子を見ていくことが必要だ。あと、終盤やプレッシャーがかかる場面は、小林に任せる形がいいと見ている。そして余裕がある場面では、山瀬慎之助などの若手を起用して、経験を積ませるのもいいだろう。

実際、原辰徳監督は打力のある大城に期待している部分は大きい。その背景には「阿部のような打力がある捕手を軸に回していきたい」という意図があるだろう。これは、自身が指揮を執っていたうち、大半の正捕手が阿部だったことが影響しているのは言うまでもない。打撃型捕手のアドバンテージを、最大限に活かしたいことがわかる。

大城・小林に対する運用と森友哉の獲得はするべきか?

他球団を見渡しても、リーグ優勝や日本一になった球団の正捕手は、打力のある選手だった場合が多い。

近年なら、2018〜2019年にパリーグ2連覇に貢献した西武の森友哉はもちろんのこと、2016〜2018年にセリーグ3連覇を成し遂げた広島の會澤翼も、2年連続ベストナインを獲得するほどの打力がある。さらに、ヤクルト連覇を果たした中村に関しても、2021年と2022年は2割6分以上記録しており、捕手としては及第点の成績ではないだろうか。

森がいる西武以外の他球団では、優勝したシーズンは複数人の捕手で運用している。当時の広島に関しては、會澤以外に石原慶幸や磯村嘉孝と併用していた。ヤクルトに関しては、中村以外に内山壮真や古賀優大といった若い選手を育成しながら起用している。

このように、疲労やパフォーマンス、先発投手との相性や直近の調子などに考慮をして、うまく運用をすることもポイントになっていることがわかる。

さて、打撃型の捕手である森の獲得は、巨人にとって視野に入れるべきポイントだ。現状では軸になりきれていない大城や小林と比較すると、非常に大きな存在になることは間違いない。今シーズン、ライオンズは柘植世那を出場させる機会を増やしているが、基本的には試合に出続けているのは森で、絶対的なチームの柱である。

この森と大城、小林、さらには若手をうまく運用していけば、各選手の打撃と守備のパフォーマンスも安定するのではないだろうか。このように、森を獲得することによって起用にも幅が広がるため、ぜひとも巨人には争奪戦に入ってほしいところだ。

▲2020プロ野球オープン戦での小林捕手 写真:AP/アフロ

プロフィール
ゴジキ(@godziki_55)
自身の連載である「ゴジキの巨人軍解体新書」「データで読む高校野球 2022」をはじめとした「REAL SPORTS」「THE DIGEST(Slugger)」 「本がすき。」「文春野球」等で、巨人軍や国際大会、高校野球の内容を中心にコラムを執筆している。今回、新たに「WANI BOOKS NewsCrunch」にてコラムを執筆。Twitter:@godziki_55