日米同盟で友好関係を演出しながらも、実際は日本を“まだ”アメリカの支配下だと見下しているアメリカ。その思想は、アメリカで使用されている教科書にも如実に表れているという。歴史学者のジェイソン・モーガン氏が、教科書問題から始まった自らの「歴史戦」を回顧しながら、日本に対するアメリカの人々の態度について解説します。

※本記事は、ジェイソン・モーガン​:著『アメリカはなぜ日本を見下すのか? - 間違いだらけの「対日歴史観」を正す -​』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。 

アメリカの学校で使われている嘘だらけの「反日教科書」

▲アメリカの教科書は間違いだらけ? イメージ:Rawpixel / PIXTA

アメリカのハーバート・ジーグラーと故ジェリー・ベントレー両教授が書いた高校の世界史の教科書がある。

ここにも慰安婦問題についてのいくつかの記述があり、それがアメリカの学生たちにとっての通説となっている。

私はアメリカの歴史学会が持つ日本に対する激しい偏見はよく知っていたので、そこに書かれていた反日的表現に驚くことはなかったが、慰安婦問題を掘り下げるごとに、そこに記述されている内容が真相から大きくかけ離れていることを知ることになった。

たとえば、その教科書には「慰安婦は天皇陛下から兵士に対する贈り物だった」ととんでもないことが書かれている。

そのような歴史的証拠は一切存在しない。

また、「大半の慰安婦は朝鮮半島から来た」とも書いてあるが、実は資料を見ると大半が日本本土から来た日本人女性だったことが判明している。

さらに、「日本帝国陸軍が朝鮮半島で大勢の女性を拉致した」と書いてあるが、その証拠はないばかりか、前線は朝鮮半島から遠く離れた満州国、ビルマ、中国、フィリピンなどであり、日本の軍隊は朝鮮半島に駐留さえしていなかったのだ。

アメリカの学会を代表する二人の偉大な教授が、日本に関する真っ赤な嘘を一つか二つどころか、少なくとも八つは吐き、アメリカの学生に正しい「史実」として教えている。

そのことに気付いたとき、私の心は怒りと悲しみが織り混ざり、複雑な心境になった。

このようなお粗末な教科書を読んで世界史について学んだ気になっているアメリカの学生たちが本当に可哀想に思えたのだ。

アメリカ歴史学会の厚顔無恥な態度

▲情けないほど厚顔無恥な学者たち イメージ:aijiro / PIXTA

アメリカの歴史学会の度量の狭さと研究レベルの低さについてはそれまでに何度か経験していたので、間違いだらけの教科書に接することは初めての経験というわけではなかった。

ただ、私がショックだったのは、歴史戦を巡る教科書問題が燃え上がってからのアメリカの歴史学会の厚顔無恥な反応と態度だ。

彼らは自分たちの誤りを絶対に認めようとしない。

真相を究明しようとする姿勢すら見せない。

同じアメリカ人の学者として深く恥じ入った。

私はまるで目から鱗(うろこ)が落ちたかのように、それまで教わった教育のすべてを疑うようになった。

アメリカの大学で東アジアを研究する自称・学者のほとんどは、羊の群れのように先頭を行く羊のあとに追従し、インコのように一番偉く思われている“鳥の言葉”をただ繰り返し、自分の年俸を守ることだけに専念しているように見える。彼らは真相を解明する考えなど持ち合わせていない。

そんな彼らと議論するのは時間の無駄だ。

こうした怒りと同時に、アメリカの歴史学会の排他的、絶対主義的傲慢さの根っこを掘り出すために私は動き出した。