非正規雇用者を安くこき使うバカ

ただし日本にもこういった非正規で働く専門家がまったくいないわけではなく、外資系のIT企業ではこういったコンサルタントを雇うことがあります。

また日本では人材が不足している病院が多いので、研修医や、どこかの病院に雇用されている医師がほかの病院にアルバイトとして週に何回か勤務することがあります。あくまで臨時の雇用ですので、割り増しの賃金が払われます。

ただし日本では他のホワイトカラーの職種ではこういった人は多くありません。一旦非正規として雇われると、技能のある人でもなぜか正社員以下の賃金が払われてしまいます。

例えばIT業界の場合、アメリカで年収1500万円も得られるような人が、非正規雇用だと年収300万円とか400万円です。

このような格差がなぜ起こるかというと、雇用する企業が非正規雇用者の賃金を不当に安く設定しているからです。

また企業と非正規雇用者の間に人材派遣会社が入ることが多いのですが、その中抜きがひどく、適切な賃金が支払われていないわけです。

▲労働者のスキルに見合った給料が支払われない イメージ:SoutaBank / PIXTA

さらに別のセクションでも述べましたが、日本の組織では職務の分担というのが明確ではなく、報酬とスキルが合致していません。

例えばシステムアナリストに営業や事務作業をやらせたり、ひどい場合は顧客対応や経理までやらせたりしていることがあります。

システムアナリストというのは業界独特の仕事のプロセスだけではなく、それをシステムに置き換えたらどうなるか、といったことを想定しますので、ITとビジネス双方の専門知識を持った専門家です。営業や単純事務に比べると相当の教育訓練が必要ですし、個人のセンスも問われます。時間単位のアウトプットの価値は単純事務よりもはるかに高いのです。ですから、専門以外の業務をやらせるのは効率が悪いのです。

一言で言えば人的資源の投入先が不適切であり、無駄遣いをしているということです。

日常生活に例えると、時速300キロで走れるスポーツカーで田んぼを耕すようなものです。畑を耕すにはコンバインのほうが効率が良いですし、スポーツカーよりも値段が安いので、お金をより効率的に使うことが可能です。

非正規雇用のバカ格差が組織を崩壊させる

正社員と非正規雇用の人の仕事がほぼ同じ場合、このような人の無駄遣いが組織力の低下につながります。意欲の低下、職場の調和の乱れ、生産性の低下を招くのです。

誰でも不公平に扱われたら気分を害しますし、だんだんやる気もなくなってしまいます。精神状態は健康にも大きな影響を及ぼしますから、不公平に扱われる人が多い職場では、病欠や長期休職の人が増えてきます。

そういったアンハッピーな人が多い職場の雰囲気というのは全体の生産性にも大きな影響を及ぼします。

ですから非正規雇用の人を不当に扱うと、短期的には人件費の節約として企業が得をするように思えるかもしれませんが、中長期で見ると組織全体が悪化するわけです。

透明性と公平性というのは組織の健康を維持するために大変重要なわけですが、派遣社員と正社員のバカ格差を解消しない日本の組織では、それが企業全体の活力の低下として表れているのでしょう。

▲不当な賃金が意欲の低下を招き組織を崩壊させる イメージ:CORA / PIXTA