S君の暴走がはじまる…

Nちゃんの自宅に電話をし、Nちゃんを呼び出して、「いつ夫と別れて、俺と結婚してくれるんだよ?」と問い詰めたり、同窓会に参加した全員が入っているグループLINEに、「Nは俺と結婚するために、夫と別れると言った。みんなの前で、いつ別れるのかちゃんと決めろよ」などと痛い書き込みをしたり。

さすがにこれはヤバいということになって、S君と仲の良かった同級生がS君をなだめて、なんとかことなきを得ました。

その後、Nちゃんは前もって会っておいた男子ではない、同窓会当日に意気投合した男と再婚しました。

中学生の息子は元夫の元へ追いやり、今はSNSでコスメ系のインフルエンサーになっているそうです。

一回同窓会が行われたことで、懐かしく思った同級生たちは結束が固まったのか、翌年もまた同窓会が開かれることになりました。NちゃんとNちゃんが結婚した男は欠席です。

S君は出席していました。

でも、周囲と話しているS君の表情は笑っているような形になっているだけで、全然楽しんでいないのが見てとれました。

Nちゃんが彼を気に入らなかったのも、こういうところなのかなと思いながら、私も話しかけました。

「久しぶり」

「ああ、僕はあなたのこと毎日見てますけどね」

意味が分からず、一瞬頭が真っ白になりました。そして全身に悪寒が……。

「私のSNSをすべてチェックしているんだ」

そう気づいたとき、思考停止してしまいました。

そして、目に入ったのは真っ黒に汚れたS君の爪。指の爪がすべて五ミリくらいの短さしかなく、内側が真っ黒……。

それは昔見た、自殺死体の爪とよく似ていて、目の前が真っ白になっていた私の脳裏にこびりついて離れません。