2022年(令和4年)7月8日、安倍元総理大臣が銃撃されたあの日から、事件の真相や犯人の思惑について連日連夜様々な報道がなされました。犯人の犯行動機についての考察や、「民主主義に対する挑戦」だという意見、国葬の是非に至るまで、多くの人々がこの事件が起こった事により、意見をぶつけ合いました。

しかし、安倍元総理は闇の勢力によって暗殺された、といった妄信めいたものまで拡散されてしまうと、そもそもその報道や多数派の意見を鵜呑みにしてしまうのは危険なのでは、と作家の適菜収氏は指摘します。

これは、SNS・テレビで根拠の薄い妄想をまくしたてる人々に騙されないためのアドバイスです。

※本記事は、適菜収:著『日本を腐らせたいかがわしい人々』(ワニブックスPLUS新書:刊)より一部抜粋編集したものです。

「山上の思い込みにより銃撃事件は起きた」と言い張るバカ

▲事件は容疑者の「思い込み」が発端? 出典:mits / PIXTA

安倍元総理の銃撃事件における大手メディアの罪も大きい。当初は、事件の背景を「山上の思い込みによるもの」とする世論誘導を行っていた。NHKは2022年7月15日、「容疑者は宗教団体に恨みを募らせた末、安倍元総理大臣が近しい関係にあったと思い込んで事件を起こしたとみられています」と報道。

産経新聞は同年7月16日に「山上容疑者は母親が宗教団体へ献金を繰り返し破産した恨みを募らせ、関係があると一方的に思い込み安倍氏を狙ったとみられている」と報じている。

日本経済新聞は同年7月8日に「銃撃の容疑者『安倍氏、特定団体につながりと思い込み』」と見出しを打った。

雑誌記事も「山上の思い込み」と繰り返していた。

言うまでもないが、これは山上の一方的な「思い込み」などではない。客観的事実として安倍と統一教会はつながっていたのだ。

自民党清和会と統一教会の関係は、大昔から指摘されてきた。

1960年代に教団系の政治団体「国際勝共連合」が設立されたのが、安倍の祖父である岸信介の力添えであったことは、政治に多少の関心を持つ人なら常識にすぎない。安倍家三代と統一教会との関わりについては、関連書籍も出ているし、報道もされている。

安倍が主催した「桜を見る会」には、安倍に近い統一教会の関連政治団体・世界戦略総合研究所の事務局次長(当時)や悪徳マルチ商法「ジャパンライフ」の会長、反社会勢力のメンバー、半グレ組織のトップらが招かれていたが、メディアにいる人間なら、安倍と統一教会の関係は当然知っているはずで、安倍と統一教会を切り離そうとする報道には、なんらかの目的があると考えたほうがいい。「山上の一方的な思い込み」説は、現実によりすでに破綻している。