小室圭さんがニューヨーク州で弁護士としての活動を始めたことがニュースとして報じられた。ワイドショーなどでは、秋篠宮ご夫妻の長女・眞子さんとの生活も、たびたび報じられるなど世間からの注目は今も高い。ここで改めて皇室の存続に関わる問題について歴史学者・倉山満氏が解説します。

※本記事は、倉山満:著『決定版 皇室論 -日本の歴史を守る方法-』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

倣うべき4つの先例を個別に見ていこう

いわゆる女系天皇容認論は、皇室典範に関する有識者会議の報告書にある通り「男系男子の皇位継承資格者の不在」という危機感から出たものです。したがって、悠仁親王殿下がお生まれになってこの世におわす限り、必要のない議論です。

ただし、悠仁親王殿下がお一人で神武天皇の伝説以来の歴史を背負っているという状況はまったく変わりませんから、何もしなくていいわけではないのです。

皇室は先例に倣う世界です。今、皇族数の確保を目的として議論されている方策について、倣うべき先例という観点から見ていきましょう。

1.女系容認

悠仁親王殿下どころか、愛子内親王殿下もまだこの世におられないときの議論ですから、女系容認の議論は“する必要のない”終わった話です。そもそも先例がありません。女系を容認するということは、日本の歴史を変えるということです。

あえて言います。悠仁殿下の身に何かあった場合、女系容認論は再び蘇ってくるでしょう。小泉内閣の時代に「女系天皇」を容認した論者たちは、菅義偉内閣のときには「今はする議論ではない」「男系継承の伝統は重い」と述べています。

さらにあえて言いますが、女系天皇を実現するために、悠仁殿下の身に危害を及ぼす、あるいは即位辞退に追い込む陰謀にも備えるべきです。

秋篠宮家の警護が、他の皇族と同じで皇太子の厳重さになっていないのが気にかかります。何か起きてからでは取り返しがつきません。

一刻も早く、秋篠宮家の警護を厳重にすべきでしょう。

2.側室

男系継承は側室の制度がないと成り立たない、という議論をよく聞きます。男系継承派の言論人のなかにも、側室制度を復活していいのではないかという人がいます。

結論から言えば、側室制度はあまり意味がありません。大前提として、子どもが必ず生まれる技術が存在しないからです。

側室が何人いようが一人も子どもを生まなければ意味がありません。そして、何十人の子どもがいようとも、その子どもたちが無事に成長するとは限りません。側室が認められていた時代においても、五世の孫の原則〔皇室の直系から遠い皇族は、五世以内に皇室から出ていって民間人となる、つまり臣籍降下しなければならないという原則〕を守る限り、何世代かあとには必ず皇室存続の危機が訪れています。

そもそも現代で、側室制度は運用できないでしょう。国内外の世論を敵に回してまでやる必要があるのか。

ただし、子どもが必ず生まれる技術は存在しないものの、現代は妊娠を支援する、あるいは不妊に対応する医療技術が発達しています。側室制度を復活させるより、ご公務を軽減してお世継ぎづくりを優先するほうがよほど期待できます。そもそも配偶者探しを真面目にやったほうがいいでしょう。そして、ご公務軽減です。

▲皇居に咲く琉球カンヒザクラ 写真:i-flower / PIXTA

3.女性宮家

「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議の報告書に記載された「皇族数確保の具体的方策」の一つに「内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持することとすること」があります。

いわゆる「女性宮家」で、皇族が減少するから結婚したあとも皇室に残っていいよ、という制度です。じつは、この女性宮家というものには、明確な定義がありません。あえて定義しておくと「宮家の当主が内親王であること」です。こう定義すると先例はあります。

ただし、世間では、そうした宮家が代々続くことを想定し、それを女性宮家と呼んでいるようです。しかし、女性が必ず宮家を継承していくのであれば、それは女性宮家ではなく「女系宮家」であって、そんな先例はありません。女性宮家には先例がある、というのは、一代限りの女性宮が当主になった先例はある、ということです。

とはいえ、女性宮がいて女性宮家があり、女性の皇族がいたとしても、その配偶者が皇族か天皇でなければ皇位継承とは関係がない話です。

女性宮家の議論のなかで、一つの仮定をお話します。既に可能性がなくなった話なので、わかりやすく実名でお話しさせていただきます。

小室眞子さんが皇族の身分を保持した場合、二つの問題がありました。一つは、小室圭さんを皇族にしていいのか。もう一つは、圭さんを「殿下」と呼ぶことができるのか。

結論から言います。

眞子内親王が皇族のまま小室圭さんと結婚して、圭さんを准(じゅん)皇族にするというのは構いません。つまり、皇族にはしない、ということです。敬称を「殿下」にするのも構いません。しかし、「陛下」には絶対ならない、ということです。

圭さん本人はもちろんのこと、生まれた子どもも皇族にはなれないし、皇位継承権はありません。たまたま、民間人にならずに皇族の身分を保持したままの眞子さんがいるだけであって、それが女性宮家というものです。

つまり、女性宮家とは皇位継承とはなんの関係もない議論です。ご公務をサポートする以外の意味はありません。

もっとも、有識者会議の議論にあるように、たとえば皇族が一人もいなくなったら、日本国憲法の運用ができません。

たとえば皇室会議です。皇室典範第五章「皇室会議」第28条第2項に「議員は、皇族二人、衆議院及び参議院の議長及び副議長、内閣総理大臣、宮内庁の長並びに最高裁判所の長たる裁判官及びその他の裁判官一人を以て、これに充てる」とあります。このまま行くと、悠仁親王殿下が皇太子になったときには皇族がいなくなります。

これはあくまで一例ですが、何もしないと悠仁殿下が即位されたとき、皇族は誰もいなくなり、皇室会議すら開けなくなります。別の言い方をすれば、日本国憲法の破綻です。もちろん、その日本国憲法と共存してきた皇室の危機です。

4.旧皇族の男系男子孫の皇籍取得

菅内閣招集の「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議では「皇族には認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系の男子を皇族とすること」「皇統に属する男系の男子を法律により直接皇族とすること」を検討すべき方策として挙げています。

つまり、旧皇族の男系男子孫の皇籍身分取得、です。

前者はどなたかの養子になる。上皇陛下、天皇陛下、秋篠宮殿下のいずれかの方々です。後者は、直接皇族となる。いずれにしても、今上陛下より「親王宣下」を賜ることになります。

戦後の占領期に皇籍離脱を余儀なくされた結果、3代経って、本来ならば皇族の方々が民間人としておられます。本来は皇族としてお生まれになるべきだったはずの人々に、親王宣下をするのはどうか、ということです。

私は「元皇族」と「旧皇族」という言葉を、意味を分けて使っています。元皇族というのは、一時期は皇族であったけれども民間人になられた方です。旧皇族というのは、本来は皇族として生まれるべきだった人が、民間人としてお生まれになって今に至っている方です。

皇籍離脱を余儀なくされた旧皇族家(昔の言い方だと伏見宮系統)には、男系男子がおられるということです。有識者会議は2つの方法を提言していますが、いずれにしても本来ならば皇族として生まれるべきだった方々に親王宣下していただくことが、この案です。

大事なのは、昨日まで国民だった方々が今日皇族になり、明日天皇になる話を前提としないことです。その方々の次の世代の方々が、生まれたときから皇族としてお育ちになる。そして、今の皇室の直系に近い方々とご結婚をすれば、なお直系に近くなる、といった解決策が主眼です。

ここに、皇位継承問題の神髄があります。