「2022絶景ローカル線ランキング」(生活ガイド.com)によると、JR釧路本線や三陸鉄道リアス線を抑えて1位に輝いたのがJR只見線。福島県の会津若松駅と新潟県の小出駅を結ぶ路線で、鉄道ファンだけなく外国人観光客にも人気の路線だが、2011年の豪雨災害やコロナ禍の影響もあり厳しい現状は続いている。

マスク着用も個人判断となり、観光客も増え始めているこれからに期待をしつつ、鉄道ビジネス研究会が只見線の現状を紹介する。

※本記事は、鉄道ビジネス研究会:著『ダイヤ改正から読み解く鉄道会社の苦悩』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

福島と新潟を結ぶ観光客に人気の只見線

風光明媚な日本の原風景のなかを走る路線として、鉄道の旅について語られる際、しばしば名前が挙がる只見線。その景色を求め外国人の乗客も多い。沿線には秘湯と呼ばれる温泉が多数あり、秘境駅と呼ばれる駅を数多く抱え、実に旅情をそそる路線である。

福島県の会津若松駅から新潟県の小出駅を結ぶ路線距離135.2kmで、秋には息を飲むような美しい紅葉が、冬には見る先すべてを白く覆った雪景色を見ることができる。

▲秋の只見線 写真:yabufoo / PIXTA

その絶景ともいえる景色は、すなわち人の少ない場所を走っているからゆえであって、当然ながら乗客は少ない。全線通しての平均通過人員は2018年度が280人。会津川口~只見間に至っては28人で、JR東日本のなかで最少である。2020年は15人で46.4%減となった。15人も変わらず最少であり、2021年には多くの路線が乗客数を増やすなか、12人と減少が続いている。

会津川口~只見間は福島県の西部、新潟県との県境から10kmほどのところを走り、その間27.6km。1日に6.5往復しか走っていないので、この間を1本あたり1人しか乗車していない計算になる。要するにこの路線、走らせれば走らせるほど赤字を生む路線なのである。

ただし、その赤字は昨日今日に始まった問題ではなく、国鉄時代の1968年に“使命を終えた路線”として廃止かバス転換が協議されている。

当時、只見線を含む83路線がその対象となり、1972年までに11路線が廃止となった。しかし、只見線は冬季に豪雪地帯となり道路が封鎖される周辺地域において唯一の交通手段となるため、廃止の議論から54年を経て今なお生き残っている。

只見線は2011年7月の豪雨により被災し、会津川口~只見間は橋が複数失われるなどして運休していた。その間は代行バスが運行されており、2021年度の乗客数、本数は代行バスによるもの。災害後しばらく復旧工事は行われず、そのまま廃線になるのではという危惧もあったが、2022年10月にようやく復旧し、只見線は11年ぶりに全線復旧を果たした。

しかし、復旧した会津川口~只見間を走る列車は3往復のみ。代行バスを運行していたときより本数は減っているが、復旧前も3往復であったので、コロナ禍の乗客減による本数削減ではないだろう。

どちらかというと、代行バスにより利便性が上がっていた同区間だが、それでも乗客は増えずにコロナ禍で乗客を減らし、列車運行再開により、さらに利便性を下げる結果となった。

災害前の只見駅の1日平均の乗車人員は30人前後であったので、それがもとに戻っても……という状況ではあるのだが、コロナ禍の行動制限を経て、回復してきた旅行客と全線復旧がどう影響し合って、只見線にどういう展開をもたらすのか。

当該区間の乗客が“0”に限りなく迫る事態となった今、その行く末に地域住民は何を思うのか。復旧時には多くの鉄道ファンが足を運び、つかの間のにぎわいを見せたが、抜本的な解決には程遠い。

▲春の只見線 写真:くまちゃん / PIXTA