ネタをつくろうと絵本を読んだのがきっかけ

――絵本づくりと漫才・コントなどのネタづくりに共通点を感じることはありますか?

ひろた 「自由度が高い」「何をやってもいい」という受け皿の広さは似ていると思います。個人的に、漫才・コントを作るのも絵本を作るのも一緒の感覚なんですよ。

ネタだと、自分たちだけで考えていきなり舞台で試すけど、絵本は、途中から編集さんやデザイナーさん、出版社に助けてもらいながら作るので、その違いはありますけど、両方とも“人を楽しませること”のゴールは一緒。根本はそんなに変わらないと思っています。

▲ネタをつくろうと絵本を読んだのがきっかけ

――ひろたさんの経歴も教えてください。なぜ、絵本作家としても活動するようになったのでしょうか?

ひろた これまで、コンビを3回組んでいるんですけど、2回目のコンビ解散をしたとき、まだ漫才をやりたかったので、ピンネタをしながら相方を探そうと思っていました。専門学校でグラフィックデザインの勉強をしていて絵を描くのは好きだったので、フリップで「変な絵本」を紹介するネタをしようと思いついて。

もともと絵本には興味がなかったんですけど、ネタの参考のためにいろいろ読んでいたら、長新太さんの『ゴムあたまポンたろう』と出会って「絵本ってめっちゃ面白い!」と衝撃を受けました。そこから絵本にハマって、バイトの前に本屋へ行って、バイトが終わってまた本屋に行くような生活をして、1年ほどで200冊ほど絵本を揃えました。

――すごい……。運命の出会いだったんですね。

ひろた SNSでも絵本に関することを発信していたら、劇場から「絵本の話をするトークライブをしませんか?」と声をかけていただきましたし、本屋さんでは絵本の読み聞かせ会をさせていただけるようにもなりました。

ただ、今まで自分でネタを作って舞台で発表していたのに、(読み聞かせだと)人が作ったものばかり読んでいることに違和感を覚えてきて……。そこで自分でも作ってみようと思ったのが『むれ』だったんです。出版社の方たちが集まる会に呼んでいただいたとき、『むれ』をお見せしたら、すぐに出版することになり、絵本作家になりました。

ひろたあきらコーナーを本屋さんに作るのが夢

――絵本作家になったあと、周囲の芸人さんから言われて印象的だった言葉はありますか?

ひろた 『むれ』が完成したときに、昔からお世話になっているパンサーの向井(慧)さんに、ごはんに連れていってもらったことがありました。完成した絵本を渡して、目の前で読んでもらったんですけど、あるページを見た向井さんが「うわ~! このページ、ひろたっぽいな」と言ってくれたんです。他の人にはなかった反応だったので、すごく覚えていますね。

――芸人としての活動はほぼされていないそうですが、賞レースをご覧になっていると、“芸人の血”が騒ぐのでは?

ひろた あるとき、『M-1グランプリ』を見て、むっちゃ感動して、“自分も面白いものを作ろう!”と思ってできたのが絵本だったんですよ。その時点で完全に“今はもう絵本作家だな”と思いました(笑)。

――特技や趣味をお仕事にされる芸人さんも多いですし、絵本作家の一面も、芸人の一面もあっていいですよね。

ひろた そのあたり、あまり決めないようにしていて。完全に「芸人を辞めて絵本作家になるぞ」と思ってやっていないというか。絵本もたまたま出版が続いているだけで、これからどうなるかもわからない。その場でやらせてもらえるもの、自分も楽しめること、をやっていきたいと思っています。

――絵本作家としての壁を感じることはありますか?

ひろた それこそ、次の絵本を出せる保証がないので常に壁ですね。ミュージシャンでも芸人でも、皆さんそうなんでしょうけど、とくに絵本は「若手ムズすぎんか?」と思うんですよ。若手の絵本作家って周りを見てもあまり名前を聞かないし、いまだに50年前の絵本がトップで売れ続けているジャンルなんで、新人がコンスタントにヒット作を生み出すって、めちゃくちゃ難しい。

話を聞くかぎり、持ち込みを断っている出版社もあって、コンクールで大賞にならないかぎり、絵本は出せないんじゃないかなって。それで発売できても、売れなかったら次はない。めっちゃ厳しい世界だなと思います。

――シビアな業界なんですね……。

ひろた だから、僕はラッキーだなと思っていて。1冊目の『むれ』で運良く賞をいただいたので、いまはその余韻で頑張れているんですけど、それでも2冊目を出すのに2年かかりましたから。「2019年の若手のなかでは一番でした」と言っていただけた僕が、こんなに大変だったら“他の方もう無理じゃん!”って思いますね。

――今後やってみたいことはありますか?

ひろた 今回の幸田町のように、日本全国には、いろんな町の面白い風習や名物、歴史がたくさんあると思うので、そういうものから着想を得た昔話を作って、絵本にするシリーズは続けたいなと思っています。

人生で、絵本を100冊出すのが目標なので頑張りたいですし、将来的に、本屋さんにひろたあきらコーナーを作るのが夢ですね。


プロフィール
 
ひろた あきら
生年月日:1989年05月08日
身長/体重:169cm /55kg
血液型:A型
出身地:愛知県 額田郡
趣味:絵本、お絵描き、アート鑑賞、木村カエラ、BiSH
特技:絶対に読みたくなる絵本トーク
出身/入社/入門:NSC東京16期扱い
Twitter:@hirota0508、Instagram:@hirota0508