GHQもお手本にした中国共産党の「洗脳工作」

一方、中国では戦時中から中国共産党が日本兵捕虜に対する思想工作を活発に行っていました。

毛沢東は、八路軍(中国共産党軍)に対して、日本兵捕虜を軍国主義者と区別し、「兄弟」として待遇するよう命じています。捕虜を洗脳して「親中派」に転換させ、尖兵として日本に送り込まなければ日本軍には勝てない、と考えたからです。

政治活動の中心地だった延安には、日本兵捕虜によって組織された「日本人民解放連盟」や「日本労農学校」がありました。そこには捕虜が収容されていましたが、監禁するための鉄条網も監視塔も警備兵も不在で、行動の自由も保証されていたようですから、中国共産党が日本兵捕虜の洗脳再教育に成功していたことになります。

中国で、この洗脳工作の任務にあたっていたのが日本共産党幹部だった野坂参三(別名「岡野進」。のちの日本共産党議長)です。

▲野坂参三 写真:新日本出版社『田村茂の写真人生』/ Wikimedia Commons

じつは、GHQも中国共産党の「洗脳工作」の成功例をモデルにして、日本の占領政策を実行していました。

それを導入した戦時情報局(OWI)の報告書にも「野坂らは天皇批判を軍国主義者批判に置き換え、軍国主義者と国民を分離し、軍国主義者への批判と国民への同情を呼びかける心理工作を繰り返し、贖罪意識を植えつけさせた日本兵捕虜を反戦兵士に転向させるまで洗脳した」と書かれています。

この毛沢東の方針に従って洗脳教育を受けた日本兵捕虜が、反日プロパガンダの宣伝を行うために、組織的に戦後の日本に送り込まれました。

中国共産党は、現在も政治家の靖國神社参拝を批判していますが、これは日本人を「悪い軍国主義者」と「悪くない国民」という設定で分断し、対立させることに狙いがあります。かつて日本兵捕虜を洗脳したやり方と同じです。無知なマスコミがそれに踊らされ、利用されているのです。

戦後も中国共産党と日本共産党は、北京郊外にマルクス・レーニン主義学院を1953(昭和28)年に設立し、日本革命のための中核的指導者を養成し始めました。ここで教育された日本共産党員は2500人前後で、日本共産党の山村工作隊として武装闘争を繰り広げたのです。新党さきがけの代表だった武村正義も山村工作隊のメンバーでした。

▲検挙される共産党員(山村工作隊) 写真:Wikimedia Commons

ソビエト(ロシア)の対日工作の基本も同じであり、アメリカ占領軍の対日心理工作の源流も分断工作という目的では同根です。日本共産党がいまだに革命政党から脱皮できないのは、戦後の一時期にせよ、日本共産党の思想工作手法が占領軍に活用され、その尖兵として活動できた“甘い夢”の味が忘れられないからでしょう。

それにしても、占領軍が「日本人から誇りと自信を奪う」目的で設定したWGIP(ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム)システムが70年を過ぎた今日も修正、是正されることなく、日本の教育機関やメディアのなかで繰り返され、無批判に継続されている現実を直視するとき、あきれるばかりか、日本の政治の貧困を感じざるをえません。

※本記事は、福田博幸:著『日本の赤い霧 極左労働組合の日本破壊工作』(清談社Publico:刊)より一部を抜粋編集したものです。