最終的にはクリエイターさんが集まる場所にしたい

――音だけではなく背景イラストも制作されていますが、音楽と調和させるために気をつけていることはありますか?

小山 あんまり現実味のなさすぎる風景を書かないことですね。音作りが大変になってしまうんですよ。ファンタジーなものに関して言うと、難しいのが天空に浮いている城。そもそも“空の音っていうのが、どういう音なのか”というのが共有されていないので、それがどういう音なのかを考える作業が出てくるんです。なので、最初から日本に存在する音で、調和が取れそうなイラストを考えて制作するようにはしています。

――動画を制作されるときはイラストが先なのか、音が先なのか、どちらなのでしょうか?

小山 両方ですね。例えば、焚き火の音やセミの音のように季節性のあるものは、先に現場に行って音を大量に録音してきて、それを聞きながらイラストを起こすことが多いです。

もうひとつが、イラストをベースに音を作るパターンですね。洞窟の音とかだと、最初に洞窟のイラスト作っておいて、それに合うような音を自宅で録音して、それをコンピューター上でエコーをかけることによって、洞窟に合うような音にしています。

――となると、ファンタジー系の動画というのは後者になるわけですね。

小山 ファンタジー系に関しては確実にそうですね。誰も体験したことのないような音を作りたくてファンタジー系の動画を始めたので。最初から音ありきで作っちゃうと、どうしてもこじんまりしたイラストにしかならないので、派手な絵を1枚仕上げてから、それに合うような音を録音する形にしたほうが、コンセプトに合う動画が作れるような気がします。

――動画についたコメントはチェックしていますか?

小山 それこそ詳しく評してくれているコメントは重宝していますね。ここが良かった、あれが悪かったみたいな。

――悪いのも。

小山 そうですね。悪いところだけじゃなくて、誹謗中傷が入っているようなコメントは不快なので削除するんですけど、単純にここが良かった、ここが悪かったみたいなコメントは参考にしています。発想は良かったけど、絵があまり追いついていなかったみたいなことを自分で思っていたときに、イラスト関係に詳しい方から「今回は影の付け方が悪かったね」といったように具体的な改善案をいただくとうれしくなりますね。

――そうしたフィードバックを次の動画に活かすこともあるんですか?

小山 かなりありますね。最近はだいぶ思考が固まってきて、改善すべきところっていうのが見えてきて、初期の動画と最近の動画を比べてみるとだんだんとアップデートされているのがわかると思います。ただ、すぐに次の動画で改善できるかっていうと、難しい音があるのでできないんですけど、できるだけ半年以内に改善しようという心積もりでやっています。

――今後、どのようなチャンネルにしていきたいですか?

小山 今のところ考えているのが、“クリエイターさんが集まる場所にしたい”ということです。最近は音楽家さんたちにお金を払って作曲してもらったり、私自身もシンセサイザー用いて作曲して動画を制作したりすることがあるんですけど、最終的には私ひとりではなく、いろんな方がさまざまな世界観を構築していけるような場所にシフトしていけたらいいなと思っています。


プロフィール
 
小山 皐(こやま・さつき)〈「Sound Forest」制作運営〉
アニメ映画のような「日常の中の幻想的な一瞬」を体験して欲しいということを目標に、環境音動画を制作しYouTubeなど各音楽配信サイトでも活動中。Sound Forest独自の、イラストやCGアニメーションを“Ambient Music”(環境音)と合わせ、心が休まる癒しの音として作業用BGMやASMRで大人気。Twitter:@KoyamaSatsuki、Youtube:Sound Forest​Sound Forest Fantasy