「心が震えるアートの話をしよう」をテーマに、TikTokやYouTubeで「耳で聴く美術館」を展開するアート・動画クリエイターのアビ(avi)さん。TikTokフォロワー数も16万人超え、YouTube登録者数は約13万人と若者を中心とした多くの人々にアートの魅力を広めている。

芸術の素晴らしさを伝えるアビさん、自らがアートに魅了されたきっかけや、動画投稿にかける思いなどをインタビューしてきました。

アートに興味を持ったガンツフェルト体験

――本日はよろしくお願いします。まずはアビさんがアートに興味を持たれたきっかけを教えてください。

アビ 学生の頃に、瀬戸内芸術祭〔瀬戸内海の島々を舞台に開催される現代美術の国際芸術祭〕の地中美術館でジェームズ・タレル氏の光を扱う“オープンフィールド”という作品に触れた体験がきっかけです。この作品では壁、天井、床との距離感がなくなり、空間を把握する手がかりがなくなるガンツフェルトを体験できます。没入感が素晴らしく、アートの持つ力を知りました。

――学生の頃は専門的にアートを学ばれていたんでしょうか?

アビ 大学では発達科学部に進学し、美術教員系の学科を履修していました。最初は美術の先生になろうと思っていて、教員免許も取得しました。結局、卒業後は素材メーカーに就職しましたが、会社員の働き方が合わなくって退職しました。

――そうだったんですね。素材メーカーを退職されたあとは?

アビ 徹底的に自分が好きな分野で働きました。動物病院やギャラリー、パーソナルトレーナーも経験しているので、人を痩せさせることもできますよ(笑)。この期間の体験が、現在のアートの橋渡しをすることにつながりました。動画作りについても、ちっちゃなデザイン会社で1年程度、働いていた経験があったので。「やったことない人にも教えてあげるよ」って、働きながらデザインの勉強をした経験が現在につながりました。

――SNSでの活動を始められて、どのぐらいになりますか?

アビ 本格的に活動を初めたのはTikTokを開設した2021年の夏からなので、約1年半です。YouTubeは2020年に開設していましたが、当初はあまり積極的に活動をしていませんでした。他にもnote、instagram、voicyも展開しています。

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歴史的な名画から若手の作品まで紹介

――動画作りについてお聞かせください。例えば、TikTok用のショート動画を1つ作るのには時間はどれぐらいかかるんですか?

アビ 勢いよく作るときは、文章校正から投稿までで2時間くらい。コンテは書かずに頭の中で全部、組み立てていきます。

――早いですね…! 撮影・編集についても教えてください。

アビ ショートは一人でスマホで撮ってます。近年では長い動画をショートに切り出されるクリエイターさんもいらっしゃいますが、私は撮り下ろしで作っています。長いものも最初は頑張ってスマホでやってたんですけど、もう書き出しの時点で画面が真っ暗になっちゃって…!

――スマホで長い動画を編集って……かなり無茶されましたね(笑)。

アビ 今は映像ディレクターをやっている高校の同級生の福ちゃんに全部任せて編集してもらってます(笑)。

――動画作りで注意されていることを教えてください。

アビ ショート動画は興味がないと一瞬でスクロールされてしまうので「いかに視聴者を引きつけるかが、めちゃくちゃ大事!」と言われています。なので、クリエイターは最初の0.5秒〜2秒に力を注ぎます。私も「なんじゃこりゃ」って引きはスタートに置いてます。専門用語を使いすぎないように意識したり、盛り上がりと曲をあわせたり、一気に引きずり込めるような構成を意識しています。

あとは「まんべんなく」を意識しています。例えば、名画を紹介する際に“真珠の耳飾りの少女”を描いたフェルメール氏のような歴史がある方だけではなく、駆け出しの若手アーティストも紹介するようにします。視聴者のアートに対する興味や知識は、人それぞれじゃないですか。さまざまなレベルの人が飽きないように、まんべんなく紹介するように心がけています。これは競合との差別化を図るためでもあります。

―― 若手アーティストといえば、YOUNG JAPANESE ARTISTSで作品の認知を広げる手助けをされていますよね。

アビ 「フォロワーが多いアーティストの作品が素晴らしいか?」と聞かれればYESではありません。素晴らしい作品を生み出せたとしても、必ずしも認知を得られるとは限りません。私が場を提供することで、飛躍してチャンスを掴んでくれたらうれしいと思います。

――他のクリエイターの作品を見ることはありますか?

アビ 見ますよ(笑)。映画紹介の齊藤進之介さんをはじめとして、参考になる方が多いです。TikTokやYouTubeには本当に素晴らしいクリエイターが、たくさんいらっしゃるので勉強させてもらってます。