スポーツ選手がルーティンを大切にしていることはご存じの通り、私たちも日々の暮らしのなかで“ある行動”を無意識の部分に刷り込んであげることができれば、成功への道が見えてくる。六代桂文枝の弟子として、落語会の巨匠を近くで見てきた夏川立也氏が、その秘訣を教えてくれました。

※本記事は、夏川立也:著『人気番組で前説を10年も任された元芸人が教えるコミュニケーション術』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

100点満点の理由は100点満点のときにある

コミュニケーションに対して、できることは限られています。スーパーマンなんてそんなにいません。誰だってできないことはできない。できることをできるようにするしかないのです。

では、どうすればいいのか。簡単です。

結果に疑問を持つことから始めてください。ポイントは「良いとき」の結果に疑問を持つこと。ほとんどの人は、良いときはスルーして、悪いときに振り返ります。逆です。

良いときに疑問を持って振り返ってください。なぜ良い結果がでたのか。なぜうまくいったのか。そうでなくても、どうして何ごともなく一日が過ぎたのかを言葉にします。これは実は難しい作業です。だから、どうしたらいいかと言えば、良いときに行っている行動を言語化するんです。それを日々踏襲する。おわかりですね。これがスポーツでいうところのルーティンです。

▲100点満点の理由は100点満点のときにある イメージ:metamorworks / PIXTA

100点満点の理由は、100点満点のときにありますからね。難しいことですが、良いときに疑問を持って振り返って、言葉にします。

例えば、営業をしていて、今日すごく大きな契約が取れたとしましょう。でも今朝、奥さんと「別れる、子ども連れて出ていく」の大げんかをしていたら、この契約は取れていない可能性があるのです。少々乱暴には言ってはいますが。

なんとかできることを、なんとかするしかないのです。

まずは、9割以上の無意識の部分があることを認識する。それをわかったうえで、コミュニケーションのシーンに行動を落とし込み、力を加えて、無意識を意図的に味方につけていく。何かをしたとき、していないときを両方同時には体験できませんから、ここは感性の問題になります。なんとなく良い感じになってきたな、と思えるようになるとしめたものです。

良い当たり前を意図的に作る

すべての人が9割以上を無意識で行動しています。その上に乗っかって、夫婦関係や職場環境……さまざまなことを考えるべきです。

でも、人生を振り返ってみてください。数%しかない意識のできる部分に、やらなければならないことを詰め込み過ぎていませんか? あとから振り返ると意識できないんです。あんなこと言っていたけど、あまり変わってないなということがあると思います。だって、意識できていないから。

じゃあ、どうすればいいのか。これ、子育ても一緒です。私たちは数%しかない意識できる部分に、やらなければならないことを放り込んだ結果できなかった、という失敗体験を積み過ぎています。残り90%以上の無意識の部分が広がっています。ここに擦り込んであげるようなイメージを持ってください。大事な大事なキーワードを申し上げますね。

『良い当たり前を意図的に作る』

当たり前過ぎる普通の言葉なんですが、この良い当たり前を、意図的に個人や組織のなかに作るんです。意識できないんですから、ある意味それ以外はないんです。これができるようになると本当に強くなります。

▲良い当たり前を意図的に作る タカス / PIXTA