いまの小学生は「α世代」と呼ばれ、デジタルに対してより柔軟な考えと適応力を持っている、一定のリテラシーを学んでいると言われていますが、「これをやってしまったらどうなるか」というリスク予測の大切さは、昔も今も変わりありません。
これからの時代を生きていく子どもたちに知っておいてほしい世の中の決まりごとを、読売テレビで長年番組制作に携わってきたコンプライアンスのプロ・山本一宗氏が教えてくれました。
※本記事は、山本一宗:著『子どもコンプライアンス』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。
「α世代」のために大人ができること
法律やネットのルールを知り、それらを守ることで昨今ニュースで聞くようなトラブルや事件から子どもたちを守りたい。。しかし、頭で「やってはいけない」とわかっていても、つい「やってしまう」……子どもはそんな存在だからこそ、親・大人の悩みも尽きないのではないでしょうか。
これまでにも、ティーンエージャーが自分のアルバイト先や、訪れた回転寿司などの外食チェーン店で「やってはいけない」と知っていながら「目立ちたい」「面白半分」「ふざけて」やってしまった行為の動画がSNSに広がるという事案がありましたが、そこで巻き起こる批判や誹謗中傷、社会的影響は想像もつかないほど大きいものになっています。
今日のネット・SNSは、いろいろな情報に対する反応、特にネガティブな面が増幅されるという特性がありますから、いとも簡単に個人名や住所は特定され、その刃はときに周辺や親を含む家族にまで及び、批判にさらされることによる精神的苦痛は計り知れません。
場合によっては、刑事・民事両面での責任を問われるなど沈静化にはかなり時間を要するばかりか、その行為はデジタルタトゥーとしてネット上に残り、一生影響を及ぼすことにもなりかねません。
一方で、子どもが批判する側に立ったとしても、その精神面や人格形成面への影響も決して軽視できず、悩みは小さくないと感じます。
デジタルネイティブといわれる「Z世代」の若者が成長し、いまの小学生は「α世代」などと呼ばれ、デジタルに対してより柔軟な考えと適応力を持っている、一定のリテラシーを学んでいると言われています。
しかし、その力を生かしネットの便利さを活用し新たな未来を創り上げるためには、その基礎として、なにより人としての分別や倫理観が不可欠なのではないでしょうか。
小学校3年生の頃、私がキャッチボールで投げたボールが隣家の壁を超え植木鉢を割ってしまう、ということがありました。このまま黙って家に帰ろうかと葛藤しつつも、恐る恐るチャイムを鳴らし親父さんに平謝りしたところ「次から気をつけろよ」と柔らかい表情で許してもらったという経験があります。
地域で子育てという時代でもあり、子どもの少々の失敗には寛大でした。そう思うと、令和の今はリアルもバーチャルも様変わりし「子どもだから許される」という概念は社会からどんどん消えつつあると思います。
「していいこと」と「してはいけないこと」を学ぶ大切さや「これをやってしまったらどうなるか」というリスク予測の大切さは、昔も今もリアルもバーチャルも変わりありません。
ネットの発展により便利さが手軽に享受できる反面、隣り合わせにある誤った認識、危険な行動へ未熟な子どもたちが近づくことのないために、分別や価値観を子どもたちに正しく伝えるべき私たち大人の認識や行動も問われている時代なのだと思います。
SNSで友達を募集していいか聞かれたら?
お子さんに「SNSで友達を募集してもいい?」と聞かれたら、どう答えればいいのでしょうか。1つの答えとして「子ども」だとわかることや「友達がほしい」などと書かないことが安全の第一歩です。
SNSでは、子どもがいろいろな「事件」に巻き込まれることが実際におきています。ネットの世界には「子ども」を狙った悪い人が意外にたくさんいる……ということを知っておいてください。
子ども、とくに小学生など未成年の女の子が SNSに年齢や学年、性別を書いたり、「寂しいから誰か話を聞いて」などとコメントしてしまうと、途端にたくさんの人からメッセージやコメントがきてしまいます。
優しそうな人と最初は楽しくやりとりしていても、だんだんエッチな話をしてきたり、悩みを聞くから実際に会おうと言われたり、会ってみたら暴行を受けて心や体に傷をおってしまったり……というように「犯罪」の被害者になってしまうこともあるのです。
ネットで、そのように優しく近づいてくる大人に本当に優しい人はいない! と思っておくほうが、命や体を守ることにつながるのではないでしょうか。
SNSの「友達」は自動で追加せず、会ったことがある人だけにする。自分のIDやQRコードは、ほかの人に渡したりネットにあげたりしない。知らない人にいいね! やコメントはしない……などルールを決めることも大事だと思います。