妹・伊藤沙莉について書いたときは涙が・・・

――この本には、これまで各媒体で執筆した記事や書き下ろしなど35本が収録されています。それぞれ、まさにエピソードトークを聞いているような感覚でした。

伊藤 “自分の言葉で書きたかった”というのはあるんですけど、そもそも書き方がわかんなかったから、というのもありますね。今まで文章を書いたことなんてないし、そこで変に文章っぽくまとめてもしょうがないなって。だったら、“ちょっとでも話を聞いている感じで読んでもらえたら”とは思っていました。

ただ、「強く儚い寿司達」(『M-1』の漫才でも題材となった寿司について綴ったエッセイ)みたいに、何かについて語るとなったときに、いま大事に思っているものと、この先大事に思うものが変わるだろうなと思っていて。何年か経って文章を読み返してみて“なんて浅はかなんだ俺は”と思う可能性もありますし、“いいこと言うわ”と思う可能性もあるなと。

――そうして文章を書いていて感情が露わになることもあるのですか?

伊藤 「我が家の問題児」(妹で俳優の伊藤沙莉や父、母、伯母、妹について、綴ったエッセイ)は、沙莉とまだ一緒に住んでいたとき(一時期、兄妹でルームシェアをしていた)に「私のことについて書いてみて」と言われて書いたんですけど、書いている途中にいろいろ思い出して泣いちゃいましたね。

――家族のことは感情を持っていかれますよね。

伊藤 そうですね。ただ、あまり湿っぽくはしたくないんですけどね。「イタリアの匂い」(妹と暮らしていたとき、彼女のためにプリンを買ったが……というエッセイ)も、本当に単純な話で、この本のなかでもだいぶ上位に好きなんですけど、エピソードトークで喋ってもウケないと思うんです。文章だから書けた感じがするんですよね。

――“東京芸人の父”と呼ばれる作家・山田ナビスコさんとの対談も収録されていますね。

伊藤 お酒を飲みながら話したんですけど、なんか普通の飲み会みたいに喋っちゃったなって思います。山田さんには本当にお世話になっているので、対談できるような日が来るなんて、と感慨深かったですけどね。

僕も含めて、みんなそうだと思うんですけど、“芸人のことを楽しそうに話している山田さん”を見るのが好きなんですよ。めっちゃわかりやすく言ったら、山田さんは東京芸人のタニマチ。改めて、東京芸人のことが大好きなんだなと思いました。

――山田さんが「オズワルド」をどう見ていたのか、キャラ漫才をやめるよう注意した話など、印象深かったです。

伊藤 本当に心をズタズタにされていましたし、山田さんがいなかったら、(現在のように)自分を出してやれることもなかったと思います。当時は結果も出ていないくせに、本当に調子こいてたなと思いますね。

M-1について伊藤が思っていること

――今後『ダ・ヴィンチWEB​​』で連載が続くとして、やってみたいこと、何か考えていることはありますか?

伊藤 編集者さんからテーマを与えられるんですが、自分の得意・不得意のジャンルもあるわけじゃないですか。noteを書いているときは、コロナ真っ只中。毎日、何か出来事が起こるわけでもないし、過去のことを思い出す作業もしんどくて……。だからテーマを投げてもらっていたんですけど、もしこのまま連載を続けさせていただく場合、一旦、自分でもテーマを考えてみようかなと思っています。

理由としては2つあって、前よりはある程度は外に出られるようになったから、書きたいことが少しずつ増えてきたこと、もうひとつは「M-1グランプリについて」など、アスリートみたいな質問をしてくるときがあって。気持ちはありがたいんですけど、やっぱり真面目すぎると本当に恥ずかしいなと。そこはうまく手を取り合っていきたいなと思っています。

――たしかに伊藤さんのM-1話は気になるところです。

伊藤 M-1直後は、いろんなインタビューで話を聞かれるし、裏の話を知りたがる方も多いので、悪いとは思わないんですけど、芸人のケツの穴だけ見せるのもなって……。松本(人志)さんのように説得力ある人が言えばいいんですけど、僕が偉そうにお笑いを語っても仕方ないなとは思いますね。

――2020〜2022年のM-1決勝終了後に書いたエッセイも収録されていますね。

伊藤 M-1について書いた記事を読み返したときに「来年こそ(優勝する)!」とか書いてあるじゃないですか。読みながら“来年もしないよ?”と思いましたけどね(笑)。恥ずかしいけど、優勝したときにまとめて書くのが一番いいのかもしれないですね。なんなら書く義務さえあるというか……。まあ、どっちみち毎年書くことになるとは思うんですけど(笑)。

ただ、M-1って本当に不思議で、M-1のおかげでテレビに出る入り口をもらったけど、全部がM-1のおかげだとは思われたくないし、優勝したい気持ちは変わらないけど、それ以外に大事なことも増えてきているからすごく難しい。

もちろん大会には出続けたいけど、それだけのイメージは絶対につけたくないし、こうして言葉にすることによって、M-1の神様に「そんな感じならいいわ」と思われてしまいそうだから、あまり口にすらしたくない。だから、つかず離れず。そのあたりのことは、僕と畠中だけがわかっていればいいかなとは思いますけどね。


プロフィール
 
伊藤 俊介(いとう・しゅんすけ)
1989年8月8日生まれ、千葉県出身。お笑いコンビ・オズワルドのツッコミ担当。東京NSC17期生。2014年11月、畠中悠とオズワルドを結成。M-1グランプリ2019、2020、2022ファイナリスト、同2021準優勝。第42回ABCお笑いグランプリ優勝。本書が初の著書となる。Twitter:@ozwalditou、note:オズワルド 伊藤、Youtube:オズワルドのおずWORLD