シーモアスタッフおすすめの作品とは?

――次は仕掛けて売れた本の話に移りたいと思うんですけど、『鬼の花嫁』の勢いがすごいですね。

石井 本当に幸運なことに『鬼の花嫁』がコミカライズされるタイミングで、コミックシーモアの先行配信をやらせていただけることになりまして。お話いただいた時点で社内的にも「これ絶対に売れるぞ」「人気が出るぞ」という温度感になりました。

3月の初回配信の時点で、かなり大々的にキャンペーンを打ちまして、積極的な広告展開もしてまいりましたので、電子書籍だったりシーモアのことをご存知ないような新しいお客様も獲得することができたかなと思います。本当に『鬼の花嫁』のおかげで、多くの方にシーモアを知っていただける機会が増えたと思っております。

結果的に、コミックシーモア史上初めて、4ヶ月連続月間総合ランキング1位を獲得するヒット作品になりました。今でも続編を楽しみにお待ちいただいていますので、今後もシーモアで盛り上げていけたらと思っております。

――トップページにあるメインジャンルに、異世界・転生が並んでいますよね。『鬼の花嫁』は現代が舞台じゃないですか。だから、わかりやすい人気ジャンルとは少しずれてるような気がしていたんです。

石井 でも、異世界トレンドの流れから話題になったと思います。読者の方が異世界の空気というか、雰囲気を受け入れたからこそかなと。

――では、個人的に推したい作品を教えてください。

石井 ドラマの流れから『大奥』にハマっていたんですけど、ドラマ放送時からシーモアでも本当に売り上げ好調の作品で、私も例に漏れずしっかりハマっているところなんですが、その大奥の流れで歴史物の漫画を気にして見るようになったんです。個人的に推していきたいと思ってるのが、『神作家・紫式部のありえない日々』という作品です。

タイトル通り、紫式部さんが主人公なんですけど、平安時代の超人気同人作家という設定で源氏物語を書いていくお話が今風に展開されてまして、登場人物たちのセリフの言い回しとかもすごくテンポよく、今風の言い回しをされているのですごく楽しくサクサク読めるお話になってまして、ちょうど来年の大河ドラマも紫式部なので、理解するためにもとてもいいなと思って今読んでおります。

――弊社にも『暴れん坊少納言』という、紫式部のライバル・清少納言を題材にした作品がありますので、もしよろしければ。では、須藤さんの推したい本をお願いします。

須藤 有名なタイトルなんですが、大学時代から『あひるの空』が大好きで、バスケットをやってたっていうこともあるんですけど、身長149センチのめっちゃ小柄な男子高校生がバスケットをやっていくって設定も面白いんですけど、家族間の愛情だったり、思春期ならではの友情関係とか、異性関係の繊細さみたいなものが丁寧に描かれているので、何回読んでも面白いし、感情移入しやすく読めるところがすごくおすすめな漫画です。

――最後にこれから取り組みたいことを教えてください。

須藤 基本的にコミックシーモアは、全てのお客様に同じページを見せているんですが、先ほどの異世界のような新たなジャンルが出てきたり、お客様の求めるものも多様化してきていると思っています。なので、お客様が一番求めているものを届けていけるよう、パーソナライズ化に取り組んでいきたいと思っているところで、今いろいろ考えています。

やはり、技術面のテクノロジーもどんどん進化していってますので、ほかの書店さんも入れられてるようなAIを使ったレコメンドだったり、自動最適化が進んでいくと感じていますので、コミックシーモアでも最新のテクノロジーを積極的に取り入れていきたいと思っています。

ただ、個人的な意見なんですけど、それだけだと何か機械的で画一的な画面になってしまうので、血の通った温かい接客は大事にしたいと思っています。今まで培ってきた、それこそ石井のところのスタッフの力だったり、人の手での運用を大切にしながら、出版社様との連携も生かして健全に電子書籍市場を発展させつつ、お客様に作品を届けられればいいなと思っています。