全部、山田のせい

子供の頃に想像していた、大人のBABI。

それは、ごくごく普通のかわいい女の子として育ち、今頃は一般的な女性の幸せを手に入れていたはず、なんです。

でも、なぜ今のBABIは、こんな感じの(変な)女の子になっちゃったんだろう?一体、私の人生はどこでおかしくなった?

ロックオンされたBABI

中学からずっと仲良しの同級生もゆきよも、みんな口を揃えて言う。「BABIがおかしくなったのは、絶対にあの中学時代だよ」と。たしかに、私の中学時代はカオスだった。

そこで出会った仲良し5人組の女の子は、ヤンキーでもギャルでもない山賊みたいなハグれものの問題児集団。ある日、希望とやる気に満ちた新人の教育実習生がやってきた。黒板の前に立つなり、威圧感を醸し出しながら自己紹介が始まる。きっと、女子校だから舐められないように、一発かましてやろうと思ったはず。

でも、私たちはそんな態度には動じない。その先生の腕を見るなり仲間のひとりのしーちゃんは「おい、オ◯筋すげーな!」と言い、先生デビューの出鼻をへし折ってしまったのだ。その他、興味のない授業のときは、教室の後ろでUNOをしていたり、休み時間は放送室をジャックしてエミネムと福山雅治さんの曲を永遠に流したりと、とにかくやりたい放題だった。

そんな私たちに目を光らせたのが、担任の山田(生物・理科)だ。

しかも、問題児が5人いたにも関わらず、ロックオンされたのはなぜか私だけ。見た目も派手だったし、中1にして学校のカースト制度のトップにいた、くさまん先輩たちと仲良くしていたのも、目をつけられた理由だったのかもしれない。私の席は一番後ろの角だったけど、生物・理科の授業になると山田は最初から最後まで私の席のほうを向いて授業を進めていった。そんな先生いる?

その後も、ことあるごとに怒られて、めちゃくちゃ怖い担任として私の目の前に立ちはだかった。だから「なんで私だけこんなに目つけられなきゃいけないんだよ。理不尽!」って感じで、本当に大嫌いだった。

▲担任の山田先生 画 : BABI

そんなある日、山田から生徒のみんなに自分の子供が生まれたという報告があった。初めての子供ということもあって、今まで見たことないくらい嬉しそうにしていた。でも、私にとって当時はどうでも良い話。だから、ちょっと茶化すつもりで悪気もなく……だったのだけど、本当に失礼な言葉を投げかけてしまった。

すると、教室が凍りついた。

さすがに、普段一緒に悪さをしている5人組のみんなも
「BABIやばいこと言っちゃったよ…」という空気になった。

「お前は人に言っちゃいけないことを言った…」

聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声でそう口にした山田。その瞬間、私の席にやってきて机を思いっきり廊下に向けてぶん投げた。

ガチャーン!!

あまりにも急な出来事すぎて、ぜんぜん関係ない女子生徒が泣き出したり、教室内が騒然となる。

それまでも山田が怖かったけど、目の前でブチギレた山田にもっとびっくりして、自分の脳内の神経がブチブチと切れていく音がハッキリとわかった。もちろん、今思えば何てひどいこと言ってしまったんだろう、と思う。

その日の午後、私たちは『食人族vs首狩り族』というホラー映画を観ながら教室で給食を食べていた。※中坊だからすぐケロッとする。

そこに、山田がやってきて「お前たちは、やっぱり人間の生命の尊さをわかってない! こんな映像を見ながら食事するな!」と、また怒られた。

そんなこんなで中学1年が終わり、クラスと担任が変わる時期がやってきた。けっこう問題を起こしていたから、仲良かった5人組はバラバラになってしまうかもしれないけど、あのウザい山田とお別れだと思うと、清々しい気持ちで2年生を迎えることができた。

さて、気分を変えて2年生を楽しむよ!

ガラガラガラ、新しい教室に新しい担任が入ってくる。

……………。
って、山田じゃん!!!

そう、2年生になっても担任は山田。
それどころか、3年生になっても担任は山田。
※席も私だけ固定。

私の中学3年間は、山田という保護観察がつくことになったのでした……。