山田は、敵なのか? 味方なのか?

結果、中学1〜3年ずっと担任だった山田。その間、ターゲットはもちろん私だった。山田っていきなりボルテージを上げてキレてくるので、中学生の私に恐怖を植え付けた。

ある日、スクールバッグに修正ペンでイラストを描いた。それは、男女がバックであの行為をしている絵だった。中学生がこんな絵を描いていたら、先生たちから注意を受けるか、心配されて親に連絡がいく。

案の定、山田が声を掛けてきた。また怒られると思ったけれど、「おっ、上手いじゃないか。最近の新作か?」と、ニコニコしながら褒めてくれた。

別の日、黒板にヒップホップ風の書体で「YAMADA F○UK!」って描いたこともあった。教室に入ってきた山田は「けっこう上手いな」と言って、嬉しそうに自分で写メを撮った。

携帯でヒップホップのMVを見ていたら、速攻で取り上げられた。「返してよ!」と言ったら「このMVだったら良し!」と、謎の返しをされたこともあった。

山田には、そういうところがある。

ゆきよは違う中学校に通っていたけれど、彼女は自分の学校にあまり馴染めていなくて友達も作っていなかったから、時々うちの中学に来て私の同級生と遊んでいました。本来なら、別の中学に入っちゃいけないけれど、山田は何も言わずにその状況を受け入れていた。見て見ぬふりするポイントが、なんかすごく上手いというか。

修学旅行で京都に行ったとき、私たちのグループが夕飯のすき焼きを食べていた。そのすき焼きが美味しくて「この肉、まじでヤベー! まじでヤベー!」って言いながら食べていたんだけど、その様子を山田がビデオで撮影していたから「勝手に撮ってんじゃねーよ!」と突き返した。

後日、保護者会に参加した同級生のお母さんから、修学旅行の報告会でそのビデオの映像を見せてもらったよ、と聞いた。私は、どうせ私たちのところはカットして、みんなお利口に楽しんでいましたよ、と報告していたんでしょ、と思っていた。

ところが、山田は私たちがすき焼きを食べている場面を映して、ニコニコしながら「親御さんのみなさん、この子たちが言っている『ヤベー!』って言葉の意味わかります? これは『美味しい!』っていう意味で使っているんですよ。それくらい、この日のすき焼きが美味しかったみたいで」なんて、嬉しそうに説明していたらしい。

そんな話を聞くと、私たちのことを本当に好きでいてくれて、愛情を持って接してくれていたんだな……と思う。

その修学旅行で、就寝時間の見回りにきた山田が「お前ら、そろそろ寝る時間だぞ!」と電気を消しにきた。もちろん私たちは「はーい」と言いながら寝たふり。見回りが終わる時間を見計って起きようとしたら、パッと電気が点いてびっくり。「そろそろかと思ったぞ(笑)」と、そこには山田の姿が。そういう風に、うちらのことを面白がっている部分もあった。

ある時、PTAで私たちの素行が悪いという話になったという。しかも、いろいろな保護者や先生から「BABIちゃんたちとは遊ぶな」という勧告が出た。でも、山田は「いや、あの子たち、本当は良い奴らなんですよ」と言ってくれたらしい。

山田には、そういうところがあった。

▲問題児!? に根気よく付き合ってくれた 画 : BABI