たとえば、資格試験の勉強をしなければならないのに、ついついゲームをしてしまう。100%同じではないにせよ、似たような悩みを持つ人は多くいると思います。だからといって、行動のコントロールを意志の力で行なおうとしても難しい……。では、どうすればいいのか――。まずは“やりたくない”と思う根本の原因を知ることが大切です。人間の行動を科学的に研究する「応用行動分析学の専門家」である竹内康二氏に話を聞きました。
※本記事は、竹内康二著『めんどくさがりの自分を予定通りに動かす科学的方法』(ワニブックス)より一部を抜粋編集したものです。
「やるべきことをやりたくない」理由は分析できる
私の専門である応用行動分析学の特徴は、行動をその前後の状況から分析することにあります。
問題となる行動があったなら、直前の状況のなかに「その行動を引き起こすキッカケ」を見つけ、直後の状況に「その行動を繰り返させるような結果が起きていないか」を分析するのです。
問題となる行動には、「やるべき行動をやらない」「やってはいけない行動をやってしまう」という2つがあります。
このように、ある行動を前後の状況を含めて分析する方法を「ABC分析」と呼びます。
ABC分析は、英語のAntecedent(直前の状況)、Behavior(行動)、Consequence(直後の結果)の頭文字をとって名づけられました。
問題となる行動に対しては、まずこのABC分析を行ない、その行動の前後の状況、つまりAとCを明らかにすることが大切。
そして、その行動に影響しているAまたはCを変えることで、B(行動)を改善していくことが、行動分析学の基本的な技術です。
「めんどくさい」の原因は必ずある
たとえば、ビジネス文書の作成の場面を考えてみましょう。
上司から「自分の作成した書類をよく見直して、誤字脱字がないか確認したほうがいい」と言われたけれど、「あとでやります」と言って先延ばしにしたとしましょう。
その場合、図のようにABC分析をすることができます。
直前の状況として、作成した書類の誤字脱字を確認するように言われます(直前)。その後、「あとでやります」と言って、誤字脱字の確認を先延ばしにしました(行動)。
この行動をとったことで、「誤字脱字の確認という、とても集中力が必要な作業のうえに、もし誤字を見つけると不快な思いをする経験を、回避することができている」ことがわかります(直後)。
誤字脱字の確認は、とても重要なことであると多くの人がわかっていることですが、いわゆる「めんどうくさい」作業なので先延ばしにしがちです。
しかし、「めんどうくさい」ということがわかっただけでは対策になりません。「めんどうくさい」の正体は何か、ということを考える必要があります。
誤字脱字の確認が「めんどうくさい」と感じる理由。それは、それが自分のミスを探す自己否定の作業であり、見つけてしまったときの精神的な負担が大きいからです。
勉強の場合でいえば、わからない問題がでてくることが自己否定の作業につながってしまうこともあるでしょう。
そうした自己否定の経験を回避するため、確認作業や勉強を先延ばしにするのは、気持ちとしては共感できる行動です。
ただ、その精神的負担に「どのように対処するのか」を考える必要もあります。
このように、普段あいまいに解釈している行動の問題をABC分析の枠組みで検討することで、問題の要因をシンプルに理解し、納得のできる行動の解釈を見つけることができます。
やるべき行動の回数を増やし、やってはいけない行動の回数を減らすために、まずは、自分の行動をABC分析で検討してみてください。