自分が不幸な目に遭っている未来が見えて、その通りのことが起きてしまう……。そう思っている人は少なくないと思います。そして、いつも憂うつな気分を引きずって生きている。大人気カウンセラーの大嶋信頼氏が、自分自身の経験をもとに“憂うつ”をデトックスする方法を教えてくれました。

※本記事は、大嶋信頼:著『憂うつデトックス』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

憂うつな出来事が確定していたらどうする?

私は、あそこに外食をしに行ったら不快な目に遭う、となんとなく予感がしているのに「まあ、自分の気のせいだろう」とか「それは考えすぎだろう」などと、その予感を打ち消してしまい、そこへ行くと「やっぱりイヤなことが起きた!」と予感が確定してしまいます。

自分の脳が“未来の自分の脳”と時空を超えてつながるから、未来に憂うつなことが起きることをちゃんと知っている、なんて誰も思わないわけです。“確定”していると思わないから「もしかしたらハッピーエンドが起きるかもしれない」と希望的観測を持ってしまって、「あーあ、やっぱり確定していた」という憂うつな結果になってしまいます。

自分で“面白いな”と思ったのは、同僚と一緒に食事に行ったとき、入った瞬間に「この店の雰囲気はおかしい」ということがわかってしまいます。これは店員さんから不快な対応をされるし、食事も食べたら憂うつな気分になるんだろうな……と自分の中では確定しているんです。

でも、ここでこの店をやめようと言ったら、同僚に不快な思いをさせるし……と自分の中で迷ってしまいます。そうして席に座ってみると「あー、他のテーブルにはおしぼりを出しているのに、私たちには出してくれない」という対応が。そして、注文をしても「なかなか料理が出てこない」とイライラしてしまいます。

すると、同僚から「なんで大嶋さんは、“この店がダメだ”とわかっているのに、そのままとどまるんですか?」と質問をされて「はっ!」と我に返ります。そうか! 憂うつな出来事が起きることが自分の中で確定していたら、自分で選択肢をいくらだって変えていいんだ! ということに、そのとき初めて気がついたんです。

それまで、自分の選択した運命は“真摯に受け止めなければならない”と思っていた。どんな憂うつなことでも、自分を成長させてくれるかもしれないから、受け止めなければいけない、と信じていた。

さらに、自分が憂うつなことを回避してしまったら、店員さんなどの他の人を不快にしてしまうかもしれない……自分を憂うつにする人に気を遣ったりして、確定している憂うつな出来事を避けることができないでいたんです。

▲憂うつな出来事が確定していたらどうする? イメージ:stockmate / PIXTA

ちょっと考えてみたら「あ! この店はイヤな予感がする」と思ったのは“失敗の未来”があって、未来の自分が失敗をして教えてくれていることだから、事前に憂うつな気分になって「憂うつな気分確定」と教えてくれている。

だから、私が周りに気を遣って憂うつな気分を受け止める必要がない。なぜなら、失敗の未来の自分が、もうすでにそれは体験していることだから。周りに気を遣って、そして、確定している憂うつな気分を受け止める、ということを未来の自分がやってくれている。それを自分がもう一度再現する必要はないんです。

つまり「イヤな予感がする」と確定しているときは、別の「違う未来を」と選択肢を探ればいい。方法は簡単で、気に入らないカードを切って捨ててしまうように「次!」と別の未来を見せてもらえばいい。すると、ちょっと遠いけどおいしい店で食事をしている自分の姿、という未来のカードが差し出され「これにしよう!」と選択をすれば、確定していた憂うつな未来を回避することができます。

「別の未来」という選択肢は無限にある

昔、ある人から「東京からニューヨークまでの行き方は何通りありますか?」と質問されて、私は航空会社によって経路が違うのを合わせて8ぐらいで、あとは船ぐらいかな? と思って「12」と答えたら、「いや、無限なんですよ!」と答えてくださった。

たしかに「日光の東照宮に行ってからニューヨークに行く」というのでも1つになるから、ありとあらゆるコンビネーションが存在していて、どんな選択肢でも選べるんだ、と思ったことがあります。

それと同じように、憂うつな出来事が確定となっている場合も、私たちの未来の選択肢は“無限”にあります。ありとあらゆる未来の自分が失敗をしていて「憂うつ確定」となっているけど、そのなかにずるい自分が存在していて「え? そんな方法で憂うつの現実から逃れられたの?」ということが存在しています。

それは自分の常識を超えた方法だったりするので、自分の頭ではなかなか考えつかないとなっている。だから「別の未来」という感じで、確定した憂うつが無い未来を“未来の自分”から提供してもらえばいい。洋服を洋服屋さんで選ぶように「次!」という感じでシャッフルしていきます。

妥協しないで「自分に似合っている!」という一着が出てきたとき、憂うつな気分が消えてテンションが上がる! となりますね。それと同じように、私たちはたくさんある未来から、すてきな未来を選択することができる。

憂うつが確定している、と思ったら、自分の頭の中で「別の未来!」と唱えてみると、自分の目の前にある別の選択肢が浮かんでくる。すると回避できない憂うつなイベントが必ず確定としてあるはず、と思うわけです。

▲「別の未来」という選択肢は無限にある イメージ:ペイレスイメージズ1(モデル) / PIXTA