あきらめることは、逃げ出すことでありません。職場や学校などの人間関係からストレスを感じているのであれば、そこから離れることが自分を守ることにつながります。テレビなどでも活躍する精神科医・藤野智哉氏が、自分のせいじゃないと前向きにあきらめる方法を教えてくれました。

※本記事は、藤野智哉:著『あきらめると、うまくいく』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

ストレスを感じたら元凶から遠ざかる

ストレスを感じる人が近くにいる場合は、そのストレスのもとから今すぐに離れてください。今すぐにです。

ストレスのもとである、とあなたが感じる人は、エネルギーを持っています。異常な熱量を持っています。それらは、あなたにとっては必要のない負のエネルギー。

エネルギーを持っている人は、良くも悪くも周囲を巻き込む力を持っています。じっとしていると、あなたはその炎に焼かれてしまうでしょう。今すぐ、その熱源から遠ざかりましょう。

どれだけ熱い炎でも、その熱さを感じるのはあなた自身。そこから離れれば、物理的に「熱い」「痛い」「ツラい」とは感じません。

炎が目に入るだけでストレスになるなら、見えないところまで離れて、距離を置きましょう。理不尽な相手というのは、相手を見て要求をしてきます。弱い相手を見つけることが得意なのです。

あなたはそういった相手に対して、最初は戸惑い、やがて怒りを覚えるでしょう。

「烈火のごとく怒る」という言葉があるように、怒りというのは「火」にたとえられます。火はすべてを焼き尽くすでしょう。相手の負のエネルギーは、あなたの心をずたずたにして、さらに怒りの炎は何もかもを焼き尽くしてしまいます。

あなたが苦手な相手のことばかり考えていると、あなたの心の優しい場所が相手の負のエネルギーによって焼き尽くされてしまうことになるのです。

「適応障害」という病気を例にとると、心に過度のストレスがかかり、自分のキャパシティーで処理できないことで発症することがあります。

みんなができても、あなたはできない。それはおかしなことではありません。だって、できないものはできないんですから。人には、それぞれ自分のキャパシティーがあるのです。できる人が多いかもしれないけど、自分はできない。それはある意味で自然なことなのです。

▲ストレスを感じたら元凶から遠ざかる イメージ:shimi / PIXTA

LINEに疲れを感じたら退会するのもアリ

人間の脳はひとつのことに集中してしまうと、他のことが処理できなくなってしまいます。おいしいと評判のレストランで料理を楽しんでいたとします。だけど、店員の態度が少しだけ気に障りました。すると、そのあとは店員に対するサービスの悪さや振る舞いばかりが気になって、とたんに料理がまずく感じてしまいます。料理の味は変わらないはずなのに。

イヤなこと、腹が立つことばかり考えていると、あなたの心はどんどん貧しくなっていきます。心に爆弾を持っているとしたら、どうにか処理しようとするのではなく、置いて逃げればいい。それができれば楽になります。

離れて考えることをやめたら、処理する必要がなくなります。離れていれば、物理的にイヤなことを考える時間も減っていきます。

たとえば、過労で抑うつ症状に苦しんでいた人が、田舎で農業をすると症状が改善するのと同じこと。環境を変えるのは、とてもいいことなんです。

職場にストレスの要因があるのだとしたら、それを取り除き、距離をおいてください。職場では休暇を取ったり、異動願いを出してもいいでしょう。

復帰しなければいけないのなら、会社の担当部署に現状をつまびらかに訴えて、相手が二度と近寄ってこないように努力することも大事です。

ストレスのもとが向こうから来る場合は、迷わず逃げてください。仕事で付き合うのはここまで、と明確に線引きして相手の侵入をブロックします。

まずは、その相手との距離を決めるといいでしょう。

会社だったら必要以上にコンタクトを取らないこと。メール、LINEでストレスを与えてくる人だったら既読スルーしてもいいし、読むのがストレスだったら、ブロックしてもいいでしょう。

LINEグループだったら脱退すればいいのです。SNSやスマホは、もはや現代の日常生活に欠かせないツール。必然的に目に入ってきますし、そこからかかるストレスは甚大です。

脱退することで、仲間外れにされるのでは……というおそれもあるでしょうが、ストレスに接して心を不健康にするよりは“まし”だとあきらめてください。

LINEアプリのアイコンが目に入るだけで、イヤな汗をかくようなトラウマになっているなら、アイコンを目立たない場所に移動して目に入らないようにしたり、アプリを削除してもいいでしょう。この時代、どんな方法でも友達とつながることはできるはずです。