審査員をやったら人の人生を背負うことになる
――以前に、板倉さんが佐久間宣行さんのオールナイトニッポンでお話されていた「いかにも仕事ができなさそうだけど自信だけはあるディレクターと打ち合わせで、そのディレクターがいなくなった瞬間に、同席しているADさんに“あいつ仕事できないでしょ?”って言う」って話がすごく好きで感動したんです。
板倉 ありましたね。でも、感動までしますか?(笑)
――はい、感動しました。それを言われたことで辞めずにすんで、今も仕事してるスタッフさんがたくさんいるだろうなって。
板倉 そうですかね……いますかね?(笑)
――ADさんとしては、“この人、全然仕事できないけど、自分より上にいて評価されてるってことは、自分のセンスが間違ってるんじゃないか”と思って、悩んだりすると思うんですよ。
板倉 空気でわかるんですよ。頭が良さそうなADさんだと、“この子、こいつの言うことに引っかかってるっぽいな”って。それ見てニヤニヤするのが好きなだけなんです。突出してイタい人っているじゃないですか、それって本人はわかってない。それを冷静に見てるADさんを見るのが好きなだけなんです(笑)。このADさんのために、とかは全くないです(笑)。
――板倉さんが面白いと思ったエンタメはありますか?
板倉 めちゃくちゃヒットしてますけど、漫画の『ザ・ファブル』とか、映画の『ジョン・ウィック』シリーズとかですかね。これだけ世の中に殺し屋の話があって、まだ殺し屋でこんな面白い話作れるんだ!って感動しました。
――やはり板倉さんの根底には、拳銃とか殺し屋とか、そういうものがあるんですね。
板倉 そうですね。自分から創作として出てくるもの全部、自分が好きなものの延長線上にある気がします。「魔法少女〇〇」みたいな話とかは、これからも書かないと思いますね(笑)。
――そういえば、板倉さんって賞レースの審査員とかをしているイメージがないですね。
板倉 ライブで「後輩のネタを見て、感想とダメ出しをしてください」って仕事をもらうこともあったんですけど、必ずアドバイスする前に「聞かなくていいからね」って言います。それは自分が若手の頃に、作家やスタッフに「こうしたほうがいいんじゃない?」って言われたことが、“いや、それもう自分の中で捨てた選択肢だわ”ってことが多かったから。
しかも、人の言うことを聞いたとして、それでウケてもスベっても他人事になっちゃうから、自分の経験にならないんですよね。ダメ出しも自分にとって有意義なことであれば取り入れればいいけど、自分の中で腑に落ちないことは聞かなくていいと思うんです。
――なるほど。
板倉 あと、審査員をやったら、人の人生を背負うことになるじゃないですか、なるべく責任を負いたくないんですよ(笑)。
いつかは田舎に家を建ててみたい
――今後やってみたいことはありますか?
板倉 うーん。それこそ、前は「原作小説がアニメ化するといいですね!」とか無邪気に言ってたんですけど、アニメにかかる費用とか人間の数を知ってしまってからは、“いやいや……大丈夫っす!”みたいな感じになってますね(笑)。
――『トリガー』とかは、海外にフォーマットが買われてもおかしくないですよね。
板倉 ああ、いいですね。先ほども言ったみたいに、責任を負いたくないというのが根底にあるので、自分発信で何かをする、というのに非常に慎重にならざるを得ない(笑)。だから、小説とか書き物は全部自分の責任で進められるからいいんですよね。
――例えば、アニメの原作などはどうですか?
板倉 いや、それも自分で全部決められるならいいんですけど、例えば美少女を主人公にラブストーリーを書いてくれ、みたいな発注だったら書けないし…(笑)。基本的に、自分でやりたいと思ったことでしか動けないんですよね。
――板倉さんといえば、ハイエースでいろいろな所に行くなど、趣味のYouTubeも人気ですよね。
〇板倉のハイエース一人旅27【初の連泊キャンプ1泊目】[板倉 趣味チャンネル]
板倉 ありがたいことに……。いつかは家を建てたいなと思ってるんですけどね。この『屋上とライフル』の話にも出てきますけど、サバゲーで使うエアガンとかヘルメットの塗装とか、自分がやりたいことって庭があれば解決することが多いんですよ。
――たしかに、庭があればあんなことにはならなかった(笑)。
板倉 そうです(笑)。ただ、いろいろ調べると、東京で家を建てるのって現実的じゃないなって。だから、家を建てるとしたら田舎かなと思うんですが……。
――え、移住ですか?
板倉 いやいや、こんなに都会の生活に慣れきった人間が、田舎の生活に馴染めるわけがないんですよ。例えばコンビニに行くのに、車で行かないといけないような生活に耐えられるわけがない。だから、2拠点がベストだなとは思ってます。