X(旧Twitter)やブログなどで北欧愛を発信し続けている週末北欧部chika。日本にいた頃からフィンランドへの旅行を続け、移住するまでに“沼って”しまった魅力をコミックエッセイなどでも発表している。

彼女がフィンランドに魅せられたきっかけ、そして実際に住んでみてわかったフィンランドの魅力や日本との違い、さらに一風変わった“フィンランドの寿司職人”という仕事に関してなど、ニュースクランチ編集部がインタビューで聞いた。

子どもの頃はチャットでコミュニケーション

――フィンランドに出会うまでのchikaさんは、どんな人生だったのでしょうか。

chika 通っていた小・中学校は田舎にありながら生徒数が多く、目立つと叩かれやすい環境だったんです。なので、周りの空気を読みながら、長いものには巻かれつつな学生生活を送っていました。その反動なのか、当時から大好きだったインターネットでチャットをすることにハマっていきました。

日本各地に住む人と、世代を超えて話せるチャットのおかげで、いま見えているものだけが自分の住む世界ではないと思えたのは、当時の私にとっては大きな出来事でしたね。

――リアルの環境で出せなかったコミュニケーションへの前向きさが、チャットによって花開いたところもあるのですね。

chika まさにおっしゃるとおりです。チャットを始めたときは、自分自身を出すのが怖かったので、男子中学生の設定にしていました(笑)。でも、四六時中コミュニケーションを取っていると、だんだん素が出てしまい……いつの間にかchikaに戻っていました。

「ありのままの自分を受け入れてもらえる世界は、自ら発見できるものだ」という現体験は、インターネットから始まった気がしていて。それが現在、chikaというペンネームで作品を出すことにもつながっていると思います。

――フィンランドに興味を持ったのは、どういうきっかけだったんでしょうか?

chika きっかけは大学生のときでした。その頃には海外の人ともGoogle翻訳で話すようになって、そこでフィンランドの方にも出会いました。じつは私自身、クリスマスに生まれたこともあって、フィンランドには前々から強い思いがあったんです。

8歳のときに通っていた英会話スクールで、サンタさんに手紙を書きましょうという授業があって、「いつか会いに行きたいです」と書いて送っていたこともありました。就活に入る直前、長期休みが取れるのはこのタイミングしかないと、クリスマスの時期にフィンランドへの一人旅を敢行しました。

そのとき、チャットで知り合った現地の友人に会えたのがうれしかったんです。そうやって全部がつながりながら、フィンランドに暮らすまでのストーリーが始まった感じです。

▲ヘルシンキの街並み

2つの距離感がフィンランドの魅力

――chikaさんがフィンランドや北欧に魅せられたところを教えてください。

chika フィンランドでもっとも魅力的だと思うのは「自然と人の距離感」「人と人との距離感」です。この2つが自分にすごく合っていて、フィンランドという国に一目惚れした大きな理由のひとつです。大学時代はいろいろな国へバックパッカーで行っていて、それぞれの国に魅力があったんですが、日本以外で初めて住みたいと思えたのは、フィンランドが初めてでした。

――なるほど。自然と人の距離感、というのは具体的にどういうところですか?

chika 例えば、フィンランドの首都「ヘルシンキ」は、首都でありながら、街の中心からすぐに森や湖に行くことができます。便利さと自然が共存しているシームレスな感じ、“田舎か都会かを選ばなくてもいい”というあり方を気づかせてくれたのがフィンランドだったんです。田舎育ちの自分にとっては、より理想的に映ったのかもしれません。

▲ヘルシンキの街並み

――たしかに東京とは違う感じですね。では、人と人の距離感についても教えてください。

chika 尊重と無関心のあいだのような、あまりグイっと入ってもこないし、入らせもしない感じが、私にはなんだか心地良かったんです。「私はこれが好き、あなたはそれが好き、どっちもいいよね」と、みんなが自分らしさを大事にしながら自立している感じに惹かれました。

私の中でフィンランドらしさを象徴する思い出があるんですけど、チャットでできた現地の友達と初めて会うタイミングで「森へピクニックに行こう!」と提案を受けたんです。え、いきなり!? と当時はびっくりしました。

私だったら、相手の好みや流行りを考えて遊びに誘っていたと思うんです。ましてや、初めて遊ぶ友達だったら……。でも、自分の好きなものを友達とも共有したいという、その気持ちは間違ってないし、それでいて無理強いもしてない雰囲気がとても心地よかったんです。

それと同時に、周りを優先し過ぎて、自分が本当に好きなことを大事にしてこなかったことにも気づきました。

――現在はフィンランドへ移住しているchikaさん。実際に生活をするとなると、旅行とのギャップを感じることもあると思いますが、そこに不安などはなかったのでしょうか?

chika フィンランドで暮らすことへの不安はありませんでした。それよりも、新しいキャリアを新しい場所で始めることへの不安がすごく大きかったんです。お寿司屋さんに応募したときもそうなのですが、行動するときはポジティブだけど、準備中にネガティブになってしまうことがあるんですよね。

――決めることはできるけど、その準備の段階でナイーブになってしまうということですね。

chika はい。なので、日本にいるあいだに、現地でネガティブになりそうな要素は、すべて対策するしかないと思ったんです。これ以上できないまでに準備をして、それで出た結果は自分の実力だから、失敗しても受け止めようという気持ちでいましたね。

ただ、当時通っていた学校の先生が、そんな私の様子を見て「100%の準備は絶対にできないんだから、完璧になるまで時間を使い続けるんじゃなくて、現地に行っちゃったほうが早いよ。行かないと何ができないかもわかんないから、できない前提で挑戦したほうがいいよ」とアドバイスをくださって。

その言葉を聞いて“確かにそうかもな”と思って、足りないものはその場で習得するという心持ちでいこうと考え直して、フィンランドに向かうことにしました。