餅でもなければニワトリでもないキャラクター
――今年の9月に発売された『マイフィンランドルーティン100 ヘルシンキ暮らし編』(小社刊)での、執筆への思いや苦労したポイント、こだわりがあれば教えてください。
chika 今回の書籍では「暮らしの中で見つけた新しいルーティンに目を向ける」ことを一番のテーマにしています。前回の1~2週間の旅とは違い、365日かつ「衣・食・住」を描きました。また、1人ではなく、誰かと一緒にという部分も異なるポイントです。たとえば今作だと、今まではいつか移住するからとか、旅行では買えないからと思っていた家具に関することが描けるようになりました。
――読んでいて、chikaさんの人間っぽい部分がより伝わってくるなと思いました。
chika ありがとうございます。前作同様に、楽しいときだけではなく、悲しいときに生まれるルーティンも大切にしています。「1人だと入りづらかったバーやレストランにも挑戦し、行動範囲が広がった」「1人で立ち寄れる静かなバーを見つけて、そこが落ち込んでいるときの避難所になった」……。
そんなフィンランドで過ごしたからこそ見えた喜怒哀楽の全てを、そのときしか発見できないルーティンもある、ということを大切に意識しながら描きました。
――ちなみに、この可愛らしいキャラクターはどのように想起されたのでしょうか?
chika 読者の方には「餅ですか?」「ニワトリですか?」など聞かれるんですけど、正体は「サンタクロースの帽子をかぶったカモメ」です。大好きな『かもめ食堂』という日本映画の影響と、ヘルシンキの街を歩いていてすごく太ったカモメたちがたくさんいて、食べ物を狙ってくるので考えついたんです(笑)。フィンランドではすごく身近な鳥であるカモメをモチーフにして、 自分がクリスマス生まれなのでサンタ帽を被ったキャラクターにしました。
日本とフィンランドで真逆のルーティン
――フィンランドといえばクリスマスですよね。12月のフィンランドならではの過ごし方についてお聞かせいただきたいです。
chika 12月は一番好きな季節で、ヘルシンキでは大聖堂の前でクリスマスマーケットが開催されます。また、クリスマスが来るまでの1か月間をカウントダウンできる「アドベントカレンダー」が、冬になる前からお店に出始めます。去年はビールのアドベントカレンダーを買って、毎日違うビールが出てくるものを選びました。今年はムーミンの紅茶のアドベントカレンダーを見つけたので、カウントダウンしながら毎日飲みたいなと思っています。
――フィンランドに暮らしていると、クリスマスが身近になって、より大切にしようと思えそうですね。
chika そうですね。フィンランドに暮らしている皆さんの過ごし方を肌で感じて、今年はよりいっそうクリスマスを大事にしたいと思っています。暮らし始めてから、そこに至るまでのカウントダウンの過程を楽しむことも、新しく自分のなかのルーティンに増えました。
――フィンランドでは、年末年始もクリスマスと同じように大事にされているのでしょうか?
chika フィンランドの年末年始はあっさりなんです。こっちで暮らすことで、日本の年末年始への力の入れ方はすごいなと気づきました。たぶん、クリスマスと年末年始を逆にするとイメージしやすいかもしれません。
私自身、レストランで働いていても、年末年始は1日しか休みがありませんでした。また、過ごし方も日本とは逆ですね。クリスマスは家族で過ごして、年末年始は友達や恋人とカウントダウンをしているイメージです。
――最後にchikaさんの今後の目標がありましたら教えてください。
chika 目標については移住前に決めたことが1つだけあって、「とりあえず3年はやってみる」こと。日本で契約社員として3年間限定だと思いながら働いていたときに、あえて期日があることで、より濃く時間を過ごせるという感覚が自分に合っていたんです。なのでフィンランドでも、期日だけは決めながら、大切に毎日を過ごそうと思っています。
今ちょうど折り返しの2年目なんですが、1年目にフィンランドの方々から学んだ「自分の人生も暮らしも、自分でデザインしていくもの」という学びを、自らも実践していくということを意識するようにしています。
時間の使い方、働き方、暮らし方から買い物に至るまで、3年目に見える景色がより自分らしいものになるよう、日々のルーティンをさらにチューニングしながら過ごしていくことを、2年目の目標にしています。