フィンランドで衝撃を受けた「イチゴ寿司」

――フィンランドに移住するためということで、仕事として選んだのが“寿司職人”というのにもシビレました。なかなか思い浮かばないアイデアですよね。

chika たしかに驚かれることが多いです(笑)。フィンランド移住直前まで働いた会社には10年いたのですが、初めは3年間の契約社員でした。なので、3年後には何をするかを考えざるを得ない、そんな特殊な状況にいたんです。その会社で当時の上司に「とにかく興味があることをしてみたらいい」とアドバイスをもらってから、北欧カフェをやりたい自分にたどり着いたんです。

週末にカフェ修行を始めたり、北欧に関するネットショップを出したりとかもしましたね。そのときに作ったのが「週末北欧部」なんです。

いろいろとやっているなかで、飲食業が思った以上に過酷なことに気づいて「これだけ大変な思いをするんだったら……どうせならフィンランドで働いて苦労したほうがいい」と発想の大転換があったんです。それで何をしようかとなったときに、日本人であることを活かせて、かつフィンランドで求人が多かった寿司職人が目に入りました。

でも、お魚をさばいたことすらなかったので(笑)。本当に合うかわからないまま会社を辞める勇気はなく、休日に通えるお寿司学校を選んで入ったんです。

▲chikaさんがお寿司学校で捌いた鯛

――そこからのスタートは大変そうですね。

chika でも、やっていくうちにすごく楽しくなってきて、寿司職人も人によって個性が出て、目の前の人に何かを届けられる仕事だと思いました。しかも、意外と世界中どこでもできるというのが、自分のキャリア観にもぴったり合っていました。そうして寿司職人修行を始めて3年目、フィンランドのお寿司屋さんで働くことになって移住しました。

――個人的に、フィンランドにもお寿司を食べる文化があるんだと思って驚きました。

chika 日本と大きく違うところは、ビュッフェスタイルでお寿司を食べるケースが多いことですかね。レストランでは、中華料理やタイ料理と一緒にお寿司が提供されるくらいで、スーパーにも量り売りされていますし、お寿司はフィンランドの人にとって想像よりも身近な食べ物でした。

▲フィンランドのお寿司

――フィンランドの方はどのようなネタが好きなんですか?

chika 一番人気は、やっぱりサーモンですね。生でそのまま食べるのもありますが、炙りにしたり、マヨネーズを付けたりもします。あとは、フィンランドのハーブである「ディル」をスモークサーモンに添えて食べるなど、ローカライズしながら、受け入れられるスタイルがたくさん考案されています。

ただ、スーパーに行くと、イチゴ寿司みたいなびっくりするネタが売られているときもあるんです(笑)。

――え! イチゴって果物のですか?

chika そう、果物のイチゴです(笑)。酢飯にバナナを巻いて、上にいちごがトッピングされてるんですよ。

フィンランドと日本の共通点は多い

――フィンランドへ実際に住んでみて、思っていたのと違った、良いこと・意外だったことをそれぞれお聞きしたいです。

chika まず良かったこととしては、私がフィンランドに一目惚れした理由である「自然と人の距離感」「人と人との距離感」に対する気持ちが、少しも色褪せなかったことです。住み慣れ始めた今でも、週末は森でキノコ狩りをしたり、友達とピクニックをすることをメインのレジャーとして楽しんでいますね。

▲街中で見つけたキノコ

そして、意外だったことは、自分の人生も暮らしも、結局は自分で決めるんだと感じたことです。移住したら理想的な暮らしが必ずしもできるわけではなくて、できないことには自ら線引きをしながら、自分にとって大事にしたいものは意志をもって守ることが必要なのだと気づきました。

人によって大切にしたいことは違っていて、一人ひとりがしっかりそれを決めて生活をしているんだと思いましたね。移住して2年目になる私も、1年目の学びを通して、自分らしい暮らしを作っていきたいと感じていて。そんなふうに考えるようになっていたことが意外で、自分自身の新しい魅力を発見できた気がしています。

――もしかすると、それはどこで暮らしても必要な心持ちなのかも知れないですね。実際にフィンランドに住んでらっしゃるchikaさんから見て、日本でも取り入れられたらいいなと思ったことはありますか?

chika フィンランドの”森はみんなのもの”という制度が、日本にもあるといいなと思いました。フィンランドでは「自然享受権」があって、誰もが森のなかでベリーやキノコを摘むことができるんです。実際、私も自然のなかでのキノコ狩りにハマっていて、こうやって楽しめるのも国の制度のおかげだと感じています。

すぐにマネするのは難しいとは思いますが、日本もすごく自然が多い豊かな場所なので、フィンランドのように楽しめたらいいなと最近考えていました。

――これはchikaさんの本を読んでいるからそう思ってしまうのかも知れないのですが、フィンランドの人って、日本のことを好意的に受け止めてくれているんじゃないかなと思いました。

chika それはすごくうれしい感想ですし、間違っていないと思います。実際に住んでみても、日本に対してフィンランドの方々はすごく好意的な印象を受けますね。フィンランドの方から「日本人とはパーソナリティーが似ている」と言われたことがあります。日本は地震などの災害が多い国ですが、フィンランドもすごく寒さの厳しい地域なので、誰かと支え合うことがベースになっているという点です。

優しく和を乱さない平和な部分のパーソナリティーが似ているのかも、と聞いたときには、“確かにそうかもしれない”と思いましたね。