相方・平子は隠れて本を読みそう(笑)

――アルピーのお二人は、もともと先輩・後輩の関係性でしたよね。平子さんに対しては、まだ先輩という意識はありますか?

酒井 敬語も使ってますし。先輩……年上だなとは思いますけど。

――5歳差ですもんね。酒井さんから見て、平子さんは相性がいい人ですか? 相方としても、もっと広く人間としても。

酒井 難しいな、これは……。たぶん、平子さんと僕って全然違うと思うんですよね。

――だからこそ、やれている?

酒井 それはたぶん、当事者の僕らではわかんないんですよ。そう言ってくれる人もいるから、“たぶん、そうなんだろうな”とは思うけど。こればっかりは、ちょっと離れてみないとわかんないですね。

――これまでバチバチの雰囲気になったことはありますか? 1回、ちょっとありましたよね?

酒井 ああ、2018年のM-1ね。うん、それくらいじゃないですか。

――漫才のオープニングで「告白を練習したい」と酒井さんが振ったら、平子さんが急に「お前、最近彼女できたって言ってじゃん」と、マジなアドリブを入れてきたという。あれは事件というか……。

酒井 あれは事件ですよ! しかも、一番大事な3回戦で。

――まだ、コンビ間で消化しきれていないくらいの印象があるんですけど。それが逆に、いい距離感なんですかね?

酒井 そうっすね、うん。いい距離感だからこそ、やっていけてる感じはするな。

――ただ、平子さんがそういうアドリブをブッ込んできたのは、平子さんのほうが酒井さんの存在を欲している関係性の表れな気もします。

酒井 そしたら僕、出演本数ランキングの16位ぐらいに入っててもいいはずですよ! どこにも連れてってくれないんだから(笑)。

――(笑)。ちなみに、この本を平子さんに読んでほしいと思いますか?

酒井 うん、読んでもいいし……読むかな?

――たぶん、平子さんは酒井さんのあらゆることを知りたがってる気がするんですよね。昔、平子さんが鏡越しに酒井さんのことをめっちゃ見ていたというエピソードもありますし。

酒井 ハッハッハ、あったあった! 読みそうだなあ、隠れて(笑)。

▲平子さん、隠れて読みそうだなぁ

野田が惚れ込んだ天才性は『有吉の壁』で吐き出す

――数年前に放送された『マヂカルラブリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)が、今も伝説です。野田クリスタルさんが「アルピー酒井がどれだけ天才だったか」を、とうとうと語った回でした。そういった一面を、アルピーファンやラジオリスナー以外にも認知させていこうという思いはありますか?

酒井 いやぁ~無理じゃないですかね、ああいうのって。若かったっていうのもあるし、あんなネタを今になってやりたいとも思わないし、たぶん伝わらないだろうし。

――モダンタイムスさんは「酒井はすごいネタをやっていた」と、今もよくおっしゃっています。ホトトギス(以前、酒井が組んでいたトリオグループ)時代に、酒井さん以外の2人が組体操をして、それを傍観するサングラスを掛けた酒井さんが、客席に「どう、オーディエンス? すごいっしょ」と尋ねるだけのネタ。

酒井 ああ、はいはい。

――そういう衝撃的なネタで、酒井さんは天才性を発揮していました。ただ、今のアルピーでは平子さんがネタを作ってますよね。お互いが天才的なネタを作っていたのに、なぜ平子さんだけがネタを作るようになったのか。それは、何かきっかけがあるんですか?

酒井 やっぱり、どっちかが1人で書いたほうがいいし、やっぱり平子さんが書いてるほうが、アルコ&ピースとしてはいいじゃないですか? 別に譲ったわけじゃないですけど、自然とそうなっていったという。

――発露したいという気持ちは、今はもうないですか?

酒井 でも、『有吉の壁』(日本テレビ系)に出させてもらうときは、2人ともネタを出さなきゃいけないので。そういうときは「自分の世界観を出そうかな」とかはありますけど。それで発散できてるというか、吐き出せる部分はあるので、それで別にまったく問題ないっていう。オンエアにのるかどうかは別の話ですけど(笑)。

――(笑)ということは、『有吉の壁』に出るときは、SOSSHO酒井(ピン芸人時代の酒井の芸名)に戻っているわけですか?

酒井 錆びついてるけどなあ、SOSSHO酒井も。

――いえいえ。ラジオを聴いていると、今もスイッチを入れれば行ける人なんだろうなと感じます。

酒井 もう、無理(笑)。マジ、無理。

――今振り返ると「これは尖ってたな」と自分でも感じる、地下芸人時代の言動ってあったりします?

酒井 たぶん、いっぱいあったと思います。地元の後輩と3人でやってた頃は、ライブに出てもエンディングには顔を出さないし、誰ともしゃべんないで3人で帰ったり。本当に、“作品”みてえな雰囲気出してました。一番ダサいって言われるような態度。

――野田さんが言ってましたよね。「みんな、酒井さんのことをラーメンズを見るような目で見てた」って。今になって「尖がってたままのほうがよかったかな?」と思うことはありますか。それとも、尖りはなくなったほうがいい?

酒井 なくなったほうがいいと思いますね。そんなふうに尖っていたままなら、こうやって本を出して取材も受けてないですから。尖ってたら尖ってたで、別の今があるのかもしれないですけど。

――天才と言われていた酒井さん、平子さん、野田さん。3人とも、今では大衆性も持ち合わせていますよね。

酒井 そうですね。それに気づく時期がないと、たぶん芸人を続けていられないとも思うので。