千原ジュニア(千原兄弟)が新たな“笑い”に挑んでいる。現在、彼は『週刊SPA!』(扶桑社)で直筆の4コマ漫画を連載中で、その作品をまとめた書籍『嗚呼 蝶でありたい』(扶桑社)を5月13日に発売した。

これまでの人生のなかで、急性肝炎やバイク事故、特発性大腿骨頭壊死症といった芸能生活どころか生死を脅かすような事故や病気などを、彼が経験をしてきたのはご存じだろうか。

これらは「人生の土壇場」として容易に想像できるが、お笑いの第一線で活躍している彼が直面した「芸人としての土壇場」はどんなときだったのか――。ジュニアに話を聞くと、2つのエピソードを話してくれた。

▲俺のクランチ 第30回-千原ジュニア-

40歳を記念して両国国技館で開催したライブ

1989年、兄の千原せいじに誘われて千原兄弟を結成。ジュニアは15歳という若さで芸人デビューを果たす。“人間味”があふれ出るツッコミのせいじと、ジュニアの類まれなるセンスが見事に絡み合い、関西であっという間に人気となった。特にジュニアが生み出すコントは、他とは一線を画しており、お笑い好きの人々を熱狂させた。

インタビューを始める前、この取材の意図を説明し、さらに急性肝炎やバイク事故、特発性大腿骨頭壊死症などはよく知られている土壇場ですが……とインタビュアーが話をすると、ジュニアはそれだけで理解し「病気や事故じゃない土壇場、ってことですよね……」と熟考し、こう答えた。

「『すべらない話』の初回ですかね」

上京して数年後の2004年、現在はフジテレビの人気番組となっている『人志松本のすべらない話』の初回収録が行われた。この番組について改めて説明すると、主宰の松本人志(ダウンタウン)がプレイヤーの名前が書かれたサイコロを振り、出た目の芸人が“すべらない話をする”というシンプルなルール。のちに、ジュニアをスターの道へと誘うキッカケとなる番組なのだが、じつはこのとき土壇場を迎えていたという。

「『すべらない話』の初回で、“千原”の目が3連チャンで出たときですよ。1発目“残念な兄が……”、2発目では“その兄が……”、3発目で“せいじが……”と、その3つを話したときが土壇場でしたね。その3つともウケないといけなかったんで、かなり痺れました」

「残念な兄」というキラーフレーズや、突出した話芸も相まって、爆笑をかっさらったジュニア。関西で絶大な人気を誇り、お笑い好きにはその実力が知れ渡っていた千原兄弟の千原ジュニアがブレイクを果たしたのは、この番組も一因としてあるだろう。

同時期に放送されていた深夜番組『虎の門』(テレビ朝日)の人気コーナー「しりとり竜王戦」の出演など、ジュニアの実力は一般層にも知れ渡っていた時期であったが、やはり『すべらない話』で結果を残したことは、彼の芸人人生において影響が大きかったとのだろうか。そうジュニアに問うと「そうですね」と深くうなずいた。

▲『すべらない話』での評判はキャリアにおいて大きかった

そして、もうひとつの土壇場として彼が言ったのが「2014 千原ジュニア40歳LIVE『千原ジュニア× 』in 両国国技館」でのこと。このライブは2014年、40歳の誕生日を迎えた彼が、両国国技館で行ったライブ。明石家さんまや松本など多くのゲストを迎えたイベントで、次の土壇場が訪れた。

「いまだに思い出すとゾッとするのは、両国国技館のライブで落語をやったときです。(会場が)円形なので、高座を回転させながら落語をやることになったんですけど、落語の練習はしていても、高座を回しながら落語をするのは本番が初めてやったんですよ。

ほんで、下(シモ)見て、上(カミ)見たら(左右を見たら)、さっき見た景色と同じ景色で、一気に三半規管がおかしくなって……。頭の中がグワングワンして、人生初の脂汗がバーッと出て、“ヤバいヤバい。でも1万人が見てる。どうしよ?”と思ったときに、瞬時に目を開けたまま焦点を合わせないようにしよう、って思いついたんです。それで“瞳孔が開いたまま”みたいな感じで、なんとか落語はやりきりました。

あのライブは5年前からいろいろ準備して、豪華なゲストにも協力していただいて、大勢のスタッフも動いてくれて、しかも1万人のお客さんが入って、当日ディレイでWOWOWでも放送される。“ここでぶっ倒れたら全部台無しやん!”って思って気を強く持ちました。あのときの落語を褒めてくださる方いるんですけど、自分としてはそんな状況でやってたってことで、これ土壇場っすよね」

▲「一瞬、気が飛びそうになって…今でもゾッとする」と話す

こうして「芸人としての土壇場」を明かしてくれたジュニア。そんな彼は、芸人としての地位を確立して以降も、YouTubeチャンネル開設や報道情報番組でMCを務めるなど、ジャンルにとらわれない活動をしているが、新たな笑いの表現としてトライしているのが4コマ漫画である。