地震について忘れず油断せずにいてください

――山口さんは地震についてもお詳しいですが、地震って多い時期、少ない時期がありますよね?

山口 そうですね。今年5〜6月に日本のあちこちで震度5弱以上の地震が6回起きました。でも、7月以降はパタッと起きなくなって最近は静かなんです。皆さん地震が頻発しているときはすごく関心を持つのですが、静かになると忘れないにしても、ゆるんでしまう。ですのえ、番組の解説で「また必ず来ますから。油断しちゃダメですよ」という話はしています。

――そんな地震に関して、皆さんにお伝えしたいことはありますか?

山口 例えば、阪神・淡路大震災は午前6時前、皆さんが寝ているタイミングで発生しました。東日本大震災は春先の真っ昼間、2018年に大阪であった震度6弱の地震は朝の通勤・通学の時間帯。どこで、いつ起きてもおかしくないのが地震なんです。

自分が学校や会社にいるタイミングかもしれないし、通勤通学のタイミング、電車や車に乗っているタイミング、家にいるとき、外出しているとき、旅行しているときかもしれない……。想像でいいので「いま起きたらどうしよう!?」とシミュレーションをしてみるのはいかがでしょうか。もちろん常日頃というのは疲れますから、たまに考えてみるのがいいかもしれません。

▲「いま地震が起きたら…」とシミュレーションしてみましょう

――危機意識を持つこと、どう逃げるか、どこに身を寄せるのかなど、考えるのも必要ですよね。寝るとき、枕元に靴や防災バッグを置いている方もいます。

山口 私の場合、靴は置いていないんですが、スリッパは置いています。足の裏を怪我したら逃げられるものも逃げられなくなってしまいますからね。

――長らく言われている「南海トラフ地震」も気になるところです。最後にどんな状況が予想されるのか、教えていただけますでしょうか。

山口 紀伊半島、高知や徳島などの四国太平洋側は、かなりシビアな状況になると思います。東日本大震災時は、30分〜1時間かけて2~30メートルの津波が来たんですが、高知だと数分でそれがくると予想されています。現地にいらっしゃる方は、揺れている最中に逃げないと間に合わないんです。

何分も揺れ続けるでしょうし、そこで冷静な行動をとるのは難しいことですが、とにかく津波避難タワーや近所の高台など、そこに向かって走るしかありません。事前に逃げる場所を決めておきましょう。地震が起きたら、頭を守って、沿岸の人はとにかく逃げてください。

内閣府が被害想定を出すにあたり、予測震度も発表していますので、お住まいの地域を見ていただいて、どれくらいの震度になるのか、把握しておくのもいいかと思います。東京でも震度5弱だと予想されています。部屋の中にあるものが落下する震度なので、落下しないように予防することが大切です。

また、地震後に1~2週間は避難しても生き延びていける「身を守る術」を準備しておくことが重要です。「南海トラフ地震」は地震後のことも考える必要がある災害です。

(取材:浜瀬将樹)


プロフィール
 
山口 剛央(やまぐち・たけひさ)
気象予報士。大学卒業後、医薬品会社に勤めながら気象予報士試験を突破。1997年にウェザーニューズ社に転職する。365日24時間配信されている天気予報番組『ウェザーニュースLiVE』では気象解説員を努める。生真面目な風貌と、記録にこだわる一面が番組でもたびたび取り上げられたり、キャスターとのやりとりも人気。