大谷翔平が世界で活躍するために勉強にも勤しんだ

ほとんどが『ホームレス中学生』のことを知らない児童たちだけれど、これをきっかけに興味を持って田村の本を読み、今日聞いた話を思い出したら「そんなつらいことがあった人が、こんなに前向きなことを言うんだ。そんな大変なことを経験しても、こんなに人に優しくなれるんだ」と感じることだろう。その気持ちは、児童たちがこれから長い人生を歩んでいくうえで大きな糧になることに違いない。

授業の終盤、田村は「なぜ勉強しないといけないの?」という小学生が抱く永遠の疑問についても自論を語った。彼が考える「勉強」とは「自分のもっている才能が見つかったときに、それを存分に開花させる手段」だそう。

田村はメジャーリーグで活躍する大谷翔平選手を例に挙げながら、「大谷くんは野球の才能があるだけじゃなく勉強も一生懸命やっていた。人の気持ちを推し量ることも上手だった。つまり、彼がこれまで頑張ってやってきたことはすべて、彼が野球をやる際、他の選手よりも秀でることに役立っている。それは勉強をしたからこそ身に付いたもの」と説いた。

勉強は一朝一夕では身に付かないものなので、自分にどんな才能があるかわからないうちから始めておかないといけないというわけだ。大谷選手とバスケを一緒にやったことがあるという田村の発言から、その考えが児童たちにも伝わったようで、ずっとメモを取り続ける姿が印象に残った。

しかし、自分の才能を見極めるのはとても難しい。田村自身も有能なお笑い芸人に囲まれて過ごすなかで、“自分には才能がない”と思って悩んだことがあったそう。

しかし「周りに『才能がないことが、おまえの才能なんだよ』と言ってくれる人がいて、自分の役割に気がついたんです。だから、みんなも自分の才能を自分だけで決めないようにしてください。好きなものを見つけて好きな世界に飛び込んだときに、誰かがあなたをしっかり見ててくれます」と熱く語った。

自分の経験をもとにして語る田村の話は“実感”を伴っているだけに、大人には頷けるところが大いにあった。ここにいる児童たちは、まだ大きな壁にはぶつかっていないかもしれけれど、いつかこの話を思い出したら心の寄りどころになると思うし、最初から最後まで真剣に田村先生の授業に耳を傾けていた彼ら彼女らが、自分たちの夢を叶えることを願ってやまない。

空き缶を拾った田村の姿を見ている人は本当にいた!

授業の終盤は質疑応答の時間、児童から「座右の銘は?」という質問が飛ぶと「気持ちを柔らかく持つ」と回答。その心を「硬いものと硬いものがぶつかったら、どっちかが壊れたり傷ついたりするけど、柔らかい気持ちで相手の言ったことを受けとめると衝突が生まれない。

今日も(上丸子小学校に)来るとき、電車のなかで空き缶を拾ったんですけど、硬い缶を僕が柔らかい心で受け止めたら、周りの人が『あれ気になるな』『イヤやな』って気持ちがなくなるやんか」と言ってニッコリ微笑んだ。

終始和やかで温かい雰囲気で進んでいった特別授業。最初は田村のことを知らなかった児童たちも、優しい言葉で丁寧に語りかける彼の話に、ぐいぐいと引きつけられ魅了された様子で、授業終了後には田村を取り囲んで盛大なハイタッチ会が自然発生した。

すべてが終わって控室に戻った田村は「みんなキラキラしてて楽しかったなぁ」と振り返りながら、「自分の経験を話すことで、みんなの夢を応援したい」と、これからも子どもたちに授業を行なっていくことへの意欲を見せていた。

ちなみに田村が電車で空き缶を拾った話、偶然に車内に居合わせた乗客がX(旧Twitter)で「麒麟の田村さんに電車で遭遇したのだが、足元に転がってきた空き缶を拾ってカバンの中に入れてた!良い人すぎんか?」と書き込んでおり、まさに「誰かがあなたをしっかり見ててくれます」という田村自身の言葉が証明された。周りの人を幸せにするという芸人らしいオチをつけたのはさすがである。

▲児童たちからの質問は予定時間がオーバーしても途切れることなかった

(取材:美馬亜貴子)