アーティストでもあり俳優でもある高野洸が、対談を通してアートの世界に触れ、表現を学ぶ「お訪ねアトリエ」。今回のゲストは、辻尾一平さん。

包んだ物をパンにしてしまう包装紙や、コーヒーを注ぐと珈琲という文字が現れ、牛乳を注ぐと牛乳という文字が現れる珈琲牛乳のグラスなど、日常的に触れるような物を思いもよらぬ視点で、ユーモラスにアップデートするような作品を作るグラフィックデザイナー・辻尾一平さん。一体どこからそんな気づきを得るのか、辻尾さんの発想の根源は何なのか? アトリエを訪ねて、たっぷりとお話を聞いた。

 

きっかけは、珈琲牛乳のグラス

辻尾:高野さんは何のきっかけで僕のことを知っていただいたんですか?

高野:あの珈琲牛乳のグラスを見て辻尾さんを知りました。

 

辻尾:ありがとうございます。あれももう4年前くらいですよね。

高野:そうですね。その時からSNSを拝見してます。(棚に並んだ作品を見て)これ、おしゃれですよね。

 

辻尾:これはアロマトグラフィーと名付けたアロマディフューザーなんですが、使うとパッケージのデザインが変わっていくというものです。アロマディフューザーって、一般的にはボトルにスティックみたいなのを挿して香りを拡散すると思うんですけど、これは箱自体がディフューザーになるという商品です。

高野:すごいですね。

 

辻尾:ボトルに水を加えてひっくり返して、箱の内部に差し込むと、箱自体に液剤が染み込んでいき、箱がディフューザーになって香りを拡散させます。そして、印刷に特殊なインク使っていて、箱に液が染み込むことで、印刷されたものの色がにじんで広がっていきます。最初は緑1色なんですけど、クロマトグラフィーっていう効果があって、色ごとに滲んでいく速度が違うので、色が分離するみたいに見えます。この効果から発想していって、見た目も楽しめるディフューザーを作りました。