ヤバい! ダンボール猫の存在が共演者にバレる!
数日後。
稽古場へ到着した僕は、稽古着に着替えて念入りにストレッチを開始。
すると、キャストの大原櫻子さんが「あのぉ〜………宮下さんアップ中にすみません」と声をかけてくれました。
「はい! なんでしょうか(^^)」
心の帯を締め直した僕は、人見知りとは思えない元気な声で、大原さんの目を見て返事ができるようになってました。
この稽古に入る前、演出家の西田大輔さんと飲みに行ったときに「雄也は人見知りだから馴染むの時間かかるだろうなぁ〜」と笑いながら仰ってたのですが、それは杞憂でっせ西田さん!
だって、こんなにも元気な声で目を見て返事ができたのだもの!
大原さん「ちょっと気になって……」
僕「あ、どのシーンですか?(^^)」(台本を取りに行こうとする僕)
大原さん「あ、いや、お芝居のことじゃなくて、そのTシャツの『おはぎ』って、なんですか?」
やってしまった。
黒の無地の稽古着Tシャツを持ってきたつもりが、おはぎTシャツを持ってきてしまっていた僕。
まだ稽古期間に突入して数日。
「おはぎって名前の自分で作ったダンボールの猫を飼ってるんですよ〜(^^)」と言うにはまだ早い。
もうちょっと僕自身がこのカンパニーに馴染んでからおはぎを披露しないと、これではだだのデブ不思議ちゃん中年でとしてシンプルに距離を取られてしまう。
『宮下さんは自作のダンボールの猫を飼ってるデブ不思議ちゃん中年』の烙印を押されて、これから大千穐楽までの約3か月を共に過ごすのは僕もキツいが、周りもキツい。
かと言って「おはぎってなんですか?」の大原さんの質問を無視するのは違う。
ここは思い切って正直に言ってみました。
「えっと、一応、僕が飼ってる猫で……」
めちゃめちゃ伏目で小声で返事しました。
心の帯? 知らん! ゆるめないと吐くわ!
なにより、この「一応」という保険にもならない言葉を足すあたりが。僕という人間を表しています。
「えー! 猫ちゃん飼ってるんですか? どんな猫ちゃんですか?」と興味を持ってくれた大原さん。
僕は、
「すみません」
と、かろうじて空耳で聞き取れそうなニュアンスの、
「ダンボール」
というひと言で返事するのが限界でした。
しかし、さすがは売れっ子の大原櫻子さん。
その後、丁寧にダンボールで作った猫を飼ってて、それをグッズ化したものだと説明すると「なんですかそれ!」と一通り笑ったあとに「おはぎちゃん、かわいいですね!」と、おはぎの存在をすんなり受け入れてくれました。
その後、西尾まりさん、明星真由美さんにも、おはぎTシャツのことを聞かれて説明すると「へぇーダンボールの猫飼ってるんだ! Tシャツ欲しい!」と、なんの抵抗も無くおはぎを受け入れてくれました。
なんだ? 売れてる人たちはダンボール猫の耐性があるのか?
うれしくなった僕は後日、おはぎTシャツをプレゼントさせてもらいました。ありがたいことにすごく喜んでくれて、その場で着ていただきました!