役者界のアベンジャーズが集結した舞台

久々の更新になってしまいました。

最近は本業の俳優業が忙しくて、ダンボールと向き合う時間よりも、台本と向き合う時間のほうが長くなってました。

 

もちろん、ダンボールブリーダーとして、おはぎたちのブラッシング(ダンボールに付いた埃取り)やトリミング(ガムテープの張り替え)は欠かさずやってますが、なにより年末から始まるロングラン舞台の出演を控えた自分に全く余裕が無くて、ただただ台本と向き合う日々でした。

そのロングラン舞台ってのが、こちらの舞台、シス・カンパニー公演『シラの恋文』です。

『シラの恋文』の詳細はこちらです

 
 

主演は草彅剛さん、ヒロインは大原櫻子さん、シス・カンパニー所属の俳優陣は鈴木浩介さん、西尾まりさん、明星真由美さん、田山涼成さん、段田安則さん。

「昔からテレビや映画で見てた方たちに囲まれて芝居稽古するのか……」と豪華な出演者の並びを眺めてるだけで、手汗がドバドバ出てきました。

まさに役者界のアベンジャーズが集結したキャスティングのなかに、末端俳優の宮下雄也の名前がある由々しき事態に僕はとまどってしまい、ひとしきり思い迷って疲れて眠ってしまうと、まだ稽古開始してないのに『シラの恋文』の稽古をしてる夢を見て、まだお会いしてない出演者の方々のお芝居に圧倒されて凹み、自信を無くす夢を見てしまう気の小ささを発揮してました。

しかし、僕も今年で人間築年数38年目。
芸歴は20年超えのそこそこ古物件。

伊達にいろんな経験をしてきてないので、今まで歩んできた道を信じて台本を開き(やる気満々)、読めない漢字を調べ(ほぼ読めなかった)、北村想さんの難解な台詞の意味を調べ(ほとんどの台詞が初めて目にする言葉だった)、一旦、自分の学力の無さに凹み(日本の義務教育のせいにした)、大好きな濃い緑茶をぐびぐび飲んで(伊藤園のやつ)、そしてまた台本を開き(やる気回復)………と、そんな感じで日々、台本と向き合い、稽古に参加する準備をしておりました。

素晴らしい環境で自信を喪失しそうになる

そして、いよいよ顔合わせ&作者本読み稽古当日。

「顔合わせ&作者本読み稽古」の「顔合わせ」というのは簡単に言うと、出演者、脚本家、演出家、プロデューサーさんやスタッフ皆さん、各事務所のマネージャーさんなどが稽古場に集まって「稽古に公演、最後までよろしくお願いしまーす!」の会。

ただ、作者本読み稽古というのは僕は初めての経験で、“今回の脚本原作者、北村想さんの前で出演者が台本を読むのかな?”と思ってたら、まさかの北村想さんが台本のト書き(物語の状況や場面の説明)、全キャストの台詞をお一人で頭から最後まで読み、出演者に物語のニュアンスをダイレクトで読み聞かせて教え、なおかつ全部読み聞かせいただいたあと、それを踏まえて改めて台本の台詞の質問を直接作者に聞けるという、とっても貴重でありがたい稽古だったようで、“作者本読み”自体を行うのはシス・カンパニーさんでは約10年ぶりとのこと。

この作品をより高みへと到達させるため、そしてこの『シラの恋文』を楽しみにしてくれてるお客さまに大満足してもらうため、出来る限りのことを徹底して本番に挑む、完璧な稽古スケジュールに感動したのが、稽古初日の思い出でした。

しかし……この素晴らしい環境で過ごす3か月後の自分はどうなっているのだろうか……。

稽古初日の帰り道、夕方の地下鉄に揺られながら吊り革を持つ僕の姿が、電車の窓ガラスに映った顔が、あまりにも自信が無さそうで反射的に目を逸らしてしまいました。

稽古初日の帰り道で“こんなメンタルでどうするんだ”と情けなくなったので、とにかく自分を鼓舞しました。

大丈夫!
大丈夫だ俺!!
俺にだってここまで辿り着いた軌跡がある!
今まで何度も壁と向き合った自分を思い出せ!
緊張して挑戦して学びを積み重ねた黄金の経験が俺にはある!

思い出してみよう。

今まで自分が演じた役を……。

 
 
 
 

まともなヤツがいませんでした。

でも、どの役も真っ直ぐ向き合い、大切に大切に演じてきた役ばかり。
彼らに出会えたから、今回の役に出会えた。

なにより、今回この舞台に出演できたのは、シス・カンパニーの社長さんが舞台に出演してる僕の演技を見て声をかけていただいたご縁から。

やってやる!

この情熱を忘れないために帰宅して速攻、台本のメモに「やるぞ!」とだけ勢いで書いきました。

 

書いてから気づきましたが、昔、大阪の西成あいりん地区を歩いてたら同じ言葉が書かれた掲示板を見つけ、“なにをやるねん!”と思ってスマホのカメラで撮った写真が、まだスマホに残ってたので一応載せときます。

 

今ならあいりん地区の掲示板の意味がわかるような気がします。

「やるぞ! やるしかない!!」

緊張と不安でゆるんでた心の帯をギュッと締め直し、翌日の稽古へと向かいました。