そして、ついに主役の草彅剛さんまでも!
「おはぎって何?」
草彅剛さんが、おはぎTシャツを着た大原さんに話しかけてきました。
大原さんは「雄也さんが飼ってる猫で、ダンボールなんですよー」と絶対に1回じゃ飲み込めない、すごいざっくりした説明をすると、草彅さんは僕を見て「ダンボール?」と聞いてきました。
やばい。ちゃんと説明しないと変な人だと思われる。
いや、ダンボールで猫を作ってる時点で変な人なのか。
とにかく引かれないように説明しないと、そう思った僕は「あ、えっと、僕の飼ってる猫で、そのダンボールで作った猫で、はい……」と草彅さんを前に緊張して何も説明できませんでした。
「え? ダンボールで作った猫を飼ってるの?」
草彅さんは真っ直ぐ綺麗な眼差しで、僕を見て質問してきました。
そのとき、僕は一瞬「あ、草彅さんって、ジョジョみたいなお顔立ちされてる……」と全く関係ないことを思ってしまいましたが、「はい、そうなんですよ。ダンボールの猫を飼ってまして……えへへ」と、なんとも情けなく笑って返事しました。
すると草彅さんは……
「へぇ〜。じゃぁ今は家でお留守番してるんだ!」
そうニコッと笑ってご自身の席へと戻って行きました。
スゴい。
スゴくないですか?
だって意味わかんないじゃないですか。ダンボールの猫を飼ってるとか。
なかなか出ない言葉ですよ? 初見のおはぎに「今は家でお留守番してるんだ」って。
スター性、いや、スターとは何かというものをダイレクトに受けて感動しました。
それから稽古を重ねて数日が経ちました。
『シラの恋文』の世界が日々仕上がっていく毎日。
僕もロン毛と別れを告げて丸坊主になり、役と作品に向き合う毎日を過ごしてました。
明星さんから「金持ちの中国人みたい」とお褒めの言葉を頂戴しました。
おはぎの存在も馴染みました。
稽古の休憩中に、僕がダンボールではない猫の動画を見て癒されてて「はぁ〜猫飼いたいなぁ〜」と独り言をつぶやくと、隣の席の鈴木浩介さんが「何を言ってるの? おはぎがいるじゃないか!」とビシッと注意されたりもしました。
稽古の合間にスタッフさんが「おはぎTシャツ購入しました」と話しかけてくれたりもしました。
先日、京都公演を終えて、約2週間ぶりに東京に戻り、家に帰ると……ホラーな光景が目の前にありました。
「あぁ〜ごめんね」とブラッシング(ダンボールに付いた埃取り)とトリミング(ガムテープの張り替え)をしっかりしました。
次は約1週間滞在する福岡公演だったので、特にしっかりグッとガムテープを押し込み、(ダンボールが凹まない程度に)飛行機の窓の外の景色と、おはぎたちをシンクロさせて福岡へ向かいました。
そして先日、帰宅したら、おはぎたちはおウチでお利口にお留守番してました。
おはぎエッセイを読んでくれた皆さま、良いお年をお迎えください!
シス・カンパニー公演『シラの恋文』
作:北村 想
演出:寺十 吾
出演:草彅剛、大原櫻子、工藤阿須加、鈴木浩介、段田安則、西尾まり、明星真由美、中井千聖、宮下雄也、田山涼成
東京公演:2024年1月7日(日)~28日(日) @日本青年館ホール
〇『シラの恋文』公式サイト