元CIA職員によって発見された新証拠

さて、2017年の機密文書とは、「JFK大統領暗殺記録収集法」に基づき新たに公開された文書と、すでに公開されている膨大な関連文書(米国立公文書館によると、関連資料約500万ページのうち全面公開されているのは、88%で11%は部分的公開にとどまり、残りの1%の文書約3000件は非公開となっていた)である。

これらを最新のテクノロジーを使い読み解いたロバート(ボブ)・ベアの人物像について、まず簡単に紹介しておこう。

ボブ・ベアは、ダラスでの暗殺について、オズワルド単独犯説に長年疑問を抱きながら、世界各地で21年間情報活動に従事してきた有能な元CIA局員である。

2016年、CIAを辞めて世界規模の調査会社を立ち上げ、さっそく元ロサンゼルス警察の警部補バーコビッチらと共に、ケネディ暗殺の謎に取り組んだ。そして、同年に調査した経過を、『解禁!JFK暗殺事件の未公開ファイル』という1回50分ほどの記録映像、全6回の長尺ドキュメンタリーとして完成させた。

我が国でも「ヒストリーチャンネル」などで何度かテレビ放映されているので、ご覧になった人もいるのではないか。

それでは、「ヒストリーチャンネル」で放映されたドキュメンタリー冒頭シーンを紹介しよう。画面にはいきなりCNNニュース番組が映し出され、「992年JFK暗殺に関する文書の公開が法制化された」の文字が出たあと、女性キャスターが「ボブ・ベアさんにお尋ねします。公開される文書に真相が記されていると思いますか?」と質問する。

それに対し、重要コメンテイターとして画面に顔を出しているベアが「そうですね、真相に近づくための大きな鍵が隠されていると思います」と答える。

そのとき、女性キャスターが「それが先ほど公開された」と述べると、「午後7時半 暗殺事件に関する2891の機密文書が公開された」の文字が浮きあがる。快調な出だしで、見るものをワクワクさせるが、中味はさらにエキサイティングだ。

オープンカーに乗り、パレード中の大統領とジャクリーン夫人の記録フィルムが映しだされ、ナレーターが語る。「事の発端は、1963年11月22日に始まる。テキサス州ダラスでケネディ大統領が射殺され……4時間後ダラス警察署はオズワルドを逮捕、そして暗殺から48時間後、オズワルドが署の前で殺害された」と一般によく知られたシーンと共に、事件の顛末が手際よく説明されていく。

ジャック・ルビーに射殺されたオズワルドのショッキングな映像など、何度見ても不可思議な場面の連続で、まるで創られたミステリドラマを見ているようだ。

そして、暗殺事件の1週間後、ジョンソン新大統領は、連邦最高裁首席判事アール・ウォーレンに調査を命じ、翌年に出された888(付属の資料を含めると約2万)ページの報告書で、オズワルドの単独犯行と結論づけた。ドラマならこれで一件落着となるのだろうが、どう考えても腑に落ちない。

出来の悪い映画シナリオのようで、結末に説得力が全くない。ウォーレン委員会の報告書が出されたときから、将来、この欠陥だらけのシナリオは全面改訂されることが約束されていたともいえよう。

ボブは、元の職場(CIA)の同僚やFBI元職員など、さまざまな捜査機関の人脈を利用し、さらに現職の情報・捜査関係者の協力も得て、歴史的事件の真相へと接近していった。その結果得られた新証拠は、コンピュータなど、最新テクノロジーを駆使して数百万の文書を読み解いた一大成果でもある。

番組の詳細な内容については割愛するが、ボブは今回の機密文書公開を以下のように締めくくった。

「オズワルドが消えてFBIは安心しただろう。彼が殺されたおかげで単独犯だと報告できるから。つまり彼の死は戦争を防いだ。もし彼がキューバとの関係を漏らしていたら、ジョンソン新大統領はハバナを爆破するしかなかった。誰もがオズワルドの死を望み、生かしておけるのにあえてそうしなかった。1963年からJFK暗殺は謎に包まれていた。54年後の今、我々はようやく真相と証拠を調べ始めた。最近公開された文書は彼が単独犯でないことを物語っている」