バラエティ番組『プレバト!!』(MBS / TBS)で、最高位となる水彩画名人10段の称号を持つ田中道子。2022年には一級建築士の試験に合格し、俳優のみならずアートと建築に精通したトライブリッドなキャラで多方面において活躍している。
昨年の12月に刊行された『あなたも才能アリになれる! プレバト公式! 名画から学ぶ水彩画』(ヨシモトブックス)でも、彼女の作品は数多く取り上げられており、監修を務める画家の野村重存氏も太鼓判を押すクオリティだ。番組では“感情むき出しアーティスト”と評される彼女に、ニュースクランチ編集部がインタビューを敢行。話を通じて見えてきたのは絵に対する真摯な姿勢と、実験性を持った飽くなき探究心だった。
『プレバト!!』の水彩画は完成までに平均40時間
今や『プレバト!!』に欠かせない存在となった田中道子。『名画から学ぶ水彩画』には歴代水彩画作品のトップ10が掲載されており、彼女の作品では、博物館で恐竜の化石を描いた『ティラノサウルス、本当は毛が生えてた説』、漁港の景色を描いた『漁師になろうよ』、首都高を描いた『出勤中』の3点がエントリーしている。
「3作品も選んでいただいたことはありがたいですが、じつは私の中ではもっと自信作があるんです。それが『浜ちゃん追撃』と名づけたボートレースの作品です。
これは右下のアンミカさんが乗る“アン”と書かれた1号艇に、浜田(雅功)さんの3号艇が迫る接戦の様子を描いた構図なんですけれど、先生いわく“1号艇があと1センチ左にあって、ボートの3文字目が見えてたら1位”とのことでした。でも聞いてくださいよ、ボートに載せられる文字は2文字までなんです。2年以上も経ちますけど、いまだに納得はしてません(笑)」
「『漁師になろうよ』という作品は、自分なりに構図を大きくアレンジしました。現場にはメインの漁師さんもいなかったし、船の場所も変えています。実際に行ったときは昼だったけれど、出航前の時間帯にして朝焼けのピンクの空を描きました。そういった工夫が評価された思い入れのある1枚です」
『プレバト!!』では写実性に加えて、絵の構図も重視される。大胆な構図の変換が見られるのも彼女の作品の特徴だ。
「途中から評価軸としてストーリー性が加わったんです。見たままの景色を描いても面白くないので、絵としての構図を変えてみたら褒められて味を占めました(笑)。『夜の工場地帯』では、画面下部に光を入れたかったので地面を海に変えて、燃えている煙突も別の場所から拝借してます。私って自分が楽しくないと絵が描けないので、やりたいことはどんどんやるようにしています」
これだけ緻密な作品を仕上げるには、平均で40時間を要するという。一級建築士の試験勉強をしていた時期は、寝る間を削って時間を捻出したというエピソードからも、彼女の根気の強さがわかる。